Discussion Paper No.1501

Abstract :
本研究では、労働者が産業によって異質な技能を持ち、各産業に必要な労働が異なるモデルにおいて、教育を導入することによって低所得に起因する失業者がどう変化するか分析する。 本研究では、教育を労働者が持つ技能を向上させる手段として捉え、分析を行っている。
労働者が多様な技能を持ち、各産業に必要な労働の質が異なるモデルの構築に際しては、貿易理論で使用されているモデルを応用した。また、効用関数を工夫することで低所得に起因する失業をモデルに組み込んでいる。教育経済学で分析されているモデルとして貿易理論を応用したモデルは存在せず、新たな研究視点を提示したと言えるであろう。本研究によって、教育が持つ2点のパラドックスを証明することができた。教育が持つ第1のパラドックスとは、教育を導入しても低所得に起因する失業が完全には無くならない点である。教育が持つ第2のパラドックスとは、労働者が持つ技能を高める手段としての教育が、低所得に起因する失業者を増やしてしまう可能性がある点である。 以上で挙げた教育が持つ2点のパラドックスは、教育が持つ特徴として興味深い点であろう。一方で、教育が持つパラドックスだけでなく、少ないコストで労働者が持つ技能を大きく向上させられる教育を導入できれば、低所得に起因する失業者を減らすことができる可能性も指摘している。