10月の経済研究所セミナー

要旨:
本報告は、共通通貨圏における最適金融政策運営の枠組みを使用して、ソルベンシーリスクとインフレとの関係を考察したものである。ここでのソルベンシーリスクとは、ある国が発行した国債が債務不履行になる可能性のことを示している。
2009年以降、欧州圏でギリシャをはじめ、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインといった5ヶ国で財政上の問題が生じ、債務不履行リスクが高まり、財政破綻が問題となっていた。本研究ではこうした出来事に対する欧州中央銀行の対応に着目し、一つの見解を示していた。
欧州地域では金融政策を司るのは欧州中央銀行であり、各国が自由に金融政策を行うことができない。そこで、各国はその制約のもと、財政政策を独自に行い、債務不履行に対するとモデル化した。その結果、インフレを抑える金融政策を行った下でも、ソルベンシ-リスクを低下させることが可能であることを示すことができた。
経済研究所セミナーには本学部の研究所スタッフが参加し、報告者との間で理論的考察に関する活発な議論を行うことで、お互いに研究上の知識を共有することができ、有意義かつ刺激的な時間を過ごすことができた。
(経済学部準教授 英 邦広)