10月の経済研究所セミナー

『エコポイント対象エアコンが家計の節電行動に与えた影響
節電アンケート調査の結果から』

松山大学経済学部准教授
溝渕健一氏

要旨
 東日本大震災は日本に対して様々な影響を及ぼしている。特に福島の原子力発電所の被災により電力産業は様々問題に直面しており、電気を使用する側(消費者や企業)としても節電等対策が求められている。今回のセミナーではこの背景を元に松山大学経済学部准教授の溝渕健一氏に消費者サイドの節電行動の報告を行っていただいた。とくに今回の報告では経済学的な視点が中心である。
 具体的には、松山市と関西から約360世帯にアンケートを行い、そのデータを用いて家計の節電行動の分析が行われている。今回の報告では、節電を行う消費者の特性を解き明かすことに主眼が行われていた。具体的には、2000年代の半ばに行われた、家電のエコポイント制による買い換えや新規購入を行った消費者に焦点を当てている。このような消費者は一般には環境の意識が高いと想定されており、実際に妥当かどうかの検証を行っている。検証の結果によるとエコポイント対象の家電を新規に購入した家庭では、近年は省エネ志向は観察されず、買い換えを行った消費者では省エネ志向が観察される傾向にあった。一方で、2012年夏季の電力不足問題では関西圏の方が、松山よりも深刻であった。このことを反映して関西圏の方がより省エネ対策を消費者レベルでも行っていることが確認された。
 このように現在の電力危機に直面している日本での省エネ対策についての実態についてアンケートデータを用いた詳細な報告が有り、活発な議論がなされたセミナーであった。
(経済学部准教授 増田淳矢)