5月の経済研究所セミナー

要旨
 5月31日開催の経済研究所セミナーでは、高知工科大学准教授の上條良夫氏をお招きして、「A theory of competitive sanctions: How should we use the stick and the carrot to manage classroom, organization and society?」というタイトルの論文報告をして頂いた。報告は、組織の規律を維持し高めるためには組織構成員に対して飴(報酬)と鞭(懲罰)のどちらを与えるのが有効であるかについて検討するという内容であった。報告で示された主要な結論は以下の2つである。1つは、最も低い能力の人の能力によって組織のパフォーマンスが決定される状況であれば懲罰が望ましい傾向にあり、逆に最も高い能力の人の能力によって決定されるのであれば報酬が望ましい傾向にあるということである。いま1つの結論は、組織構成員の能力が能力分布の中央値に密集しているようであれば懲罰が、能力が二極化しているようであれば報酬が望ましいということである。これらの結論はいずれも、組織構成員の能力の分布や組織を特徴づける技術のあり方に応じて飴と鞭を使い分ける必要性を示すとともに、その使い分けの仕方を提示しているという点で、現実的かつ理論的にも極めて重要なものであると言える。
(経済学部 都丸善央)