12月の経済研究所セミナー

日時:2012年12月7日(金)16時40分~18時10分
場所:中京大学名古屋キャンパス・経済学部会議室(14号館4階)
講師:三宅敦史氏(神戸学院大学経済学部准教授)
論題:Public Education Investment and Endogenous Fertility

 OECD加盟国の中で,公的教育支出(対GDP比)が低い国ほど出生率も低いという顕著な傾向がある.わが国においても,少子化の要因の一つとして子の養育費・教育費の高さが指摘されているが,公的教育支出が低水準であれば,私的に教育に支出する必要性が高まり,親の教育費負担は増大する.三宅氏の報告は、こうした現状認識に基づいて,公的教育が出生率や人的資本に及ぼす影響を分析したものである.
 当報告の大きな特徴は公的教育投資と私的教育投資を同時に考慮し,それらの間に補完性あるいは代替性があるという2つの可能性を許容している点である.公的な義務教育を終えた後,私立高校に進学する場合を考えれば補完性が存在する一方で,公立高校と私立高校は代替的である.そして,公的教育の財源は親に対する所得税によって調達される.当報告の主要な結果として,公的教育と私的教育が代替的である場合,出生率を最大化する所得税率と人的資本を最大化する所得税率は一般的には異なる.そして,当初の所得税率がそのいずれよりも低いならば,税率を引き上げることによって人的資本のみならず出生率を上昇させることができる.この結果は,公的教育支出の対GDPが低い国においては,公的教育支出の増加が少子化の改善につながることを意味する.
 現実に対する説明力と重要な政策的含意を有するきわめて興味深い報告であった.
(12月7日,名古屋キャンパス14号館経済学部会議室)
(経済学部教授・経済研究所長 釜田公良)