Discussion Paper No.2304

Abstract :
2020年12月に成立した生殖医療民法特例法は、生殖補助医療を受けられる対象を同性カップルやシングルにも拡大し、親になりたい人の平等を拡大する可能性がある一方、子の出自を知る権利を留保したことで批判されることとなった。今回のケースのように、生殖補助医療においてある平等が他の平等を押しのける場合、どのような倫理的な解決が図られるべきか。本稿はセンのケイパビリティの概念を生殖補助医療に適用し、日本の事例を分析する。
センによれば親になりたい人と生まれた子のケイパビリティは双方とも重要な平等の概念であるが、彼らの福祉の平等が対立する場合には子のケイパビリティの平等が優先されなければならない。生殖医療民法特例法は、附帯決議で子の福祉を優先することに同意した一方で、子の知る権利の保障を留保した。よって、二年を目途の検討期間があるとはいえ、生 殖医療民法特例法はセンのケイパビリティからみて反平等主義的内容を含む可能性がある。

Keywrods: アマルティア・セン、生殖補助医療、ケイパビリティ、平等、日本