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アートギャラリーC・スクエア

第109回企画 富田菜摘展 ─ ユートピア ─

会期 9月24日(月)〜10月20日(土)
休館日 日曜・祝日
開館時間 午前9時〜午後5時 入場無料
作家によるトークイベント
日   時 9月29日(土) 14:30~15:30
会   場 C・スクエア会場内
(富田菜摘さんが自作の前で作品について話します)
※聴講無料 申込不要
※終了後、レセプションを開きます。

作品紹介

「フランキー」

「フランキー」2012年 D55×W33×H53㎝ ミクストメディア、金属廃材

「諭吉」

「諭吉」2007年 D125×W77×H82㎝ ミクストメディア、金属廃材

「さんざん待たせてごめんなさい」

「さんざん待たせてごめんなさい」2008/2010 -11年 D450×W160×H182㎝  ミクストメディア、新聞、雑誌

解説

富田菜摘の生みだしたもの

 

森本悟郎 中京大学アートギャラリーC・スクエア

富田菜摘とその作品の初見は2007年、東京・京橋の画廊で、作家にとっても初の個展だった。人が乗れるほどの大亀を中心に、その周りを小亀たちが取り巻いていた。それらは全て廃材で造られたものだった。デュシャンやピカソを持ち出すまでもなく、廃材を使った表現であるジャンク・アートは現代美術の一手法として前世紀に確立し、今や多くの作家たちによっておこなわれている。当初は反芸術的動機や文明批判を伴っているものの今や手法として一般化し、エコロジーや消費社会批判などとの関連を唱える向きもあるが、ジャンク・アート自体に批評性があるわけではない。従って、(あくまでも推測であるが)富田菜摘がジャンク・アートを選んだのは、廃材自体に美を発見したこと、そして表現素材としての多彩な有用性をそれに認めたことによるのだろう。まことに巧妙に配された廃材は、いっとき工業製品として働いた後、終の棲家としてもっともふさわしい場を与えられたかのように作品の中に収まっている(これは実見して確認いただきたい)。しかし富田作品が筆者を魅了したのは、何よりも作家の素材(物質)と作品への強い愛着を感じたことであり、それが手仕事に対する素朴なほど誠実な取り組みに支えられていることによるのだった。

愛着のひとつの現れが作品に名前を付けることにもある。詳述は別の機会に譲るが、「名前」と「題名」とは似て非なるものである。ともに作品の固有性を示すには違いないが、「題名」が作品の表現内容に関わる(それゆえ題名が作品を見誤らせることも起こりうる)のに対して、「名前」はまさにその作品個々の固有名であり、その形姿や内容とは無関係なのである。これは個々をより明確に分節することであり、自分の子供やペットに名を付けることと同じであって、それぞれに「人格」を認めることでもある。富田作品の愛おしさは、造形の質のみならず、作家と作品との関係の深さからも発しているように思われる。

2009年2月、国立新美術館で開かれた「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」の多摩美術大学ブース入口付近に、数体の等身大人像が列をなしていた。富田菜摘の卒業制作、「さんざん待たせてごめんなさい」であり、ここに新たな人物シリーズが加わることとなった。これまでの作品からモチーフは動物から人物に、素材は金属やプラスティックスから紙(印刷物)に変わったのだが、何より大きな変化は文字を表現に取り入れたことである。人像それぞれの表面に印刷物がくまなく貼りつけられており、その印刷物は人物造形にふさわしい媒体とその文字や写真が選ばれている。これは作家の批評眼による人物の典型化である。作品としては面白いし興味深い試みであるが、危険も孕んでいる。人間についての深い洞察が試されることになるからだ。始まって3年のこのシリーズもヴァリエーションが増えた。今後の進化と深化を期待し注視したい。

今夏、筆者は新潟県で開催の「大地の芸術祭 2012」に出掛け、「森の学校」キョロロ(十日町市松之山)で富田菜摘の展示を観た。同館の展示は周辺に生息する実際の生き物と、美術家たちによる生き物を主題とした作品とのコラボレーション。夏休みでもあり、会場は学生や家族連れで賑わっていた。富田作品は展示台や壁面に何の遮蔽物もなく設置されており、目で鑑賞するばかりでなく、手で触れて楽しむ人もいた。まことに不作法な鑑賞法であるが、だからといって一概に悪いとはいえない。傍目には、触ったところで古い日用品の感触を得るだけと思われるだろうが、彼らは必ずしもそう思っていない可能性がある。私たち生物も、その組成は地球の構成物質によるのだが、だからといって触感が同じではない。生物や鉱物の多様性は触感の多様性でもある。富田菜摘の使用する素材が使い古された工業製品から取られた金属やプラスティックスであったとしても、新たな形を与えられることで、それらは別な手触り感を有するように見えるかも知れない。それを自らの手で確かめたいと思うのは不自然な欲求ではない。そして、もしももとの素材とは違った感触を得たとしたら、それはモノに生命が吹き込まれていたということを意味しないだろうか。

プロフィール

富田菜摘
富田菜摘(とみたなつみ)
1986 東京生まれ
2009 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業

■個展
2007humanite lab vol.17「 GALAPAGO」 ギャルリー東京ユマニテ(東京)
[爬虫綱有鱗目イグアナ科]富田菜摘展 スタートラインギャラリー(東京)
2008「I LOVE SON」NODA CONTEMPORARY(名古屋)
「動物たちのゆかいな森」ふなばしアンデルセン公園子ども美術館(千葉)
2009WONDERLAND」日新製鋼ギャラリー(東京)
「PARADISE」福住画廊(大阪)
「よりどりみどり」ギャラリーストレンガー(東京)
「It's A Wonderful World」 iPreciation(シンガポール)
2010「Night Carnival」福住画廊(大阪)
「富田菜摘のこんなアートもある」髙島屋東京店美術画廊X(東京)
「さんざん待たせてごめんなさい」ギャルリー東京ユマニテ(東京)
「森の木陰でどんじゃらほい」GALLERY エクリュの森(静岡)
2012「さんざん待たせてごめんなさい」福住画廊(大阪)

■主なグループ展
2008「現代美術の動物園」浜田市世界こども美術館(島根)
2009「里山アート動物園」まつだい農舞台ギャラリー(新潟・十日町市)
「髙島屋美術水族館」髙島屋東京店美術画廊(大阪他巡回)
2011「The 3rd COREDO Women's Art Style」コレド日本橋(東京)
「帰ってきたりったいぶつぶつ展」Bunkamura Gallery(東京)
「A Group Exhibition of Emerging Japanese Artists」iPRECIATION(香港)
「IMPACT 2011」ギャルリー東京ユマニテ(東京)
「体験型現代美術展 ~芸夢・ゲーム~」浜田市世界こども美術館(島根)
「TAMA VIVANT II ただいま検索中」多摩美術大学/パルテノン多摩(東京)
「アートで泳ぐ 海の中」おかざき世界子ども美術博物館(愛知)
「寺田コレクションの若手作家たち」東京オペラシティアートギャラリー(東京)
2012「sogno・夢〜彫刻家二田原英二と次代を担う作家展~」佐藤美術館(東京)
「Female times- 女性作家たちの今、これから-」Bunkamura Box Gallery(東京)
「キョロロの森のなかまたち」越後松之山「森の学校」キョロロ(新潟)

■ワークショップ
2008ふなばしアンデルセン公園子ども美術館(千葉)
2008、2011浜田市世界こども美術館(島根)
2010髙島屋東京店美術画廊
2011おかざき世界子ども美術博物館(愛知)
2012国立新美術館(東京)

■その他
2008作品展示「FAMILY 富田菜摘と仲間たち」OTEMACHI CAFE(東京)
アートワークプロジェクト参加 町田市民病院小児科外来廊下(東京)
作品展示 日本橋三越本店ショーウィンドウ(東京)

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