教員紹介

協調作業(コーディネーション)支援環境研究室

問題解決状況の認知科学的分析とコンピュータによる協調作業支援

情報工学科 土屋 孝文

自己紹介

 人間の知能の働きを情報の解釈・理解・生成(知識と問題解決)をキーワードにしてとらえるという考え方を耳にしたのは20才.そのためにコンピュータを道具にするという紹介(これは認知科学の視点の一つ)にびっくり.さらには,楽しいお喋り(つまりはいい加減な噂話)をするソフトウェアを作るなんて壮大な計画を聞かされ2度びっくり.それまで,コンピュータのことなど興味がなく,使って楽しいと思ったことなど一度もなかったのですが,当時の個性的な先生たちの一人からお聞きした認知科学放談にノせられ苦行に耐えようと(ちょっと)決意.21才の時に初めて触ったコンピュータは DEC製のミニコン VAX750.こいつ一台でマンションが買えると言われ,夏休みをつぶしバイトして作った授業料の元をとったと思いました.やがて PROLOGというコンピュータ言語に熱中し,人工知能が何をどう研究するのか,その楽しみ方がわかったように思います.その後,仏の顔をした鬼の指導教官の下,札幌すすきのを道案内する対話システムの実現に,先輩や仲間とともにとりくみました.この時期の激しいドタバタとジタバタ,無茶を承知で学生たちを巻き込んだ指導教官の熱い指導を経て,「自分は,驚くほど人間がわからない.これではプログラムのしようがない」と実感させられました.このシステムに関係するたくさんの問題が,その後の自分にとっておもしろい研究テーマとなっています.  こういったコンピュータと人間たちとの関わりについての研究は,実は普段の生活の中では気にもしない素朴な難問の山です.自分のことなのにわからないことや見落としていたことにハっとしながら,鋭い科学者たちからセンスを学び(お勉強としてキーワードを暗記するのではなく),私が体験させられたように実際に自分でやってみることから,自分にとっての情報知能学の楽しさをみつけてほしいと思っています.

ゼミの方針

 20世紀後半を経て,「人工知能」という言葉の持つ意味は,自分だけで知的な振る舞いをするコンピュータといったものから,大きく変ったように思います.ここ数年の研究テーマは,大別すると (A)コンピュータによる協調作業支援に関する研究,(B)自然言語コミュニケーションに関する研究,(C)問題解決や意思決定における感情の役割に関する研究となっています.(A)や (B)は,1人の人間と知的なソフトウェアとの関係を問題にするだけではなくて,役割の異なるユーザたちや知的なソフトウェア群を結びつけて,1人だけでは生み出すことのできない知的な成果をもたらしてくれる新しい作業環境や活動を作り出すというものです.こういった卒論は,先輩が残していった研究成果や専門知識を基に自分のアイディアを整理して,新しい作業環境を設計・実現し,仲間や後輩たちをユーザにして実際に使ってもらい,その結果を評価して次の世代へつないでいく活動になります.各作業環境には,たくさんの異なるテーマがあります.ぜひ「ヒントの共有や提示」「ヒントの解釈の違い」「プログラミングの学習活動支援」「楽しく活動することからの学習」「講義中心の学習活動支援」といったキーワードをもつ卒論研究をイントラサイトから見てください.そして仲間たち(自分も)とコンピュータが含まれた「情報知能学科という環境」に起こる知的な活動を自分自身の研究でよりよりものに変えられないか,考えてみてください.それは新しい人工知能の1つだろうと思っています.このような研究では人間とコンピュータの両方,それらの組み合わせをみる必要があります.そしてもちろん,様々な分野で行われてきたこれまでの人工知能研究の取り組みや知能へのアプローチがとても役にたちます.(C)は人工知能的な立場から人間の知能の働きを考えていく認知科学的なテーマの一つです.  ゼミは,まず自分が先輩たちが作ったシステムのユーザとなって経験した環境を,今度は情報科学や認知科学の知識を使って考え直してみることからはじめます.コンピュータそのものは嫌いで構いませんが,コンピュータを使う人間たちへの興味だけは必須です.3年前期は専門用語が詰まった論文をしつこく読みながら,これまでの2年間で学んできた内容について整理と復習をして,さらに先へ進む準備をします.私の担当科目は全て,どこかが卒論のテーマに関係しているはずです.3年後期は,各人の興味や知識にあわせ,卒論と同じ時期をメドに終了するミニプロジェクトを本格化させます.ゼミの時間では,「本当にやれそうなことなのか」を,時には個別に議論します.空き時間とゼミの時間のほぼ全てが,各自のプロジェクトのために使われています.プログラミングをやり直す人もいれば,教科書や論文をあたる人もいます.この時点で考えたこと,やり残したことを卒論へつなげていきます.こうして,後期までには「あなたにとっての情報知能とは何ですか(楽しいですか)」「あなたはどんなことをしていますか」といった典型的な質問に自分なりの回答を作れるようになっていきます.4年生では,自分を主人公にした ”卒論プロジェクト物語 ”を創り出してください.

担当科目

プログラミングI,アルゴリズムとデータ構造A,人工知能プログラミングII,コミュニケーション支援論,ヒューマン・インターフェイス

略歴
  • 1964年 北海道札幌市生まれ
  • 1988年 北海道大学文学部行動科学科社会心理学講座,卒業
  • 1990年 北海道大学大学院文学研究科修士課程修了
  • 1990年 から中京大学情報科学部
  • 1993年~1994年
    オランダ北部にあるグローニンゲン大学,
    Dept. of experimental and occupational psychology,
    PROGAMMA客員研究員