ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

発事故後の対処行動をめぐる選択決定に関し、意見の対立による葛藤と摩擦が生じている。中には関係の破綻に至っているものもある。また、近所・知人との間でも、争いを避けるため、本音や不安を口にすることができない、考え方を押し付けられるというストレスが生じている。外部の人との関係では、福島出身者であることによる差別や偏見の不安が多く指摘されている。さらに、原発事故後の賠償・補償の線引きは、自分より優遇されている避難区域の人などに対する差別感情を、半ば無意識に生じさせている側面もある。(6)情報アンケート対象者の多くは、情報不信を抱いている。情報内容の矛盾や情報発信主体に対する不信による。情報不信は、過少・過剰な対処行動の原因となる。これを解消するのは容易ではない。また、情報不信は、アンケート対象者の関心を低下させ、ふと思い出したときにその関心の低下を危惧する不安を抱かせている。この不安は、人によっては苦痛を生じさせる一方、関心の低下はあきらめを生む。他方で、福島が忘れられていく不安、あるいは、もっと知ってほしいという声も指摘されている。その背景には、今後も原発事故に遭った福島の子どもなどに関心を寄せ、サポートしてもらえなくなるという不安が伺える。(7)賠償・補償ア賠償アンケート対象者の大半は、十分な賠償を受けることができない不安を抱いている。賠償に関する不満は挙げればきりがないほど多い。このように、アンケート対象者は、被害の実態に応じた賠償がなされていないと感じている。この不安は経済的不安を増幅させる。加えて、〈子どもの将来の健康被害について賠償がなされないのではないか?〉という不安を生じ1,200 Fukushima Mothers Speak(成元哲・牛島佳代・松谷満) 97( 97 )