ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

に関する意見も多く見られた。これも放射能を回避する対処行動であり、生活に関する基礎的な事柄であるため、ここに分類した。家計(分類③)は、生活環境の変化を経済的側面から明確にする趣旨の項目である。収入と支出を区別した上、支出については費目ごとに整理した。子育て(分類④)は、子育てに焦点をあて生活環境の変化を記録するための項目である。ただ、子育てに関する意見には、原発事故後の漠然とした不安を含めて、実に多種多様な意見が寄せられている。そこで、原発事故および放射能との関連性が強く、かつ具体的な要素を、遊び、放射能対応(検査等)、出産の3 つの項目に分類し、残部をその他の意見として整理した2。人間関係(分類⑤)は、対人的な側面での生活環境の変化を明確にすべく、人間関係の性質に応じて整理した。具体的には、夫婦・親族、近所・知人、外部、賠償において取扱いの異なる者の4 つに分類した。今回の福島原発事故後の福島県中通りの親子にとって不安やストレスの源泉となり、放射能への対処行動をめぐる親の迷いと苦悩の根源となっているのが情報の不確実性である。具体的には、誰の、どういった情報を信じればよいのかわからないというこの一点に尽きる。こうした放射能不安、リスク対象行動をめぐる苦悩に関する母親の心の叫びのような意見を情報(分類⑥)の項目を設け、「情報不信」と、事故から時間が経つにつれ、日常生活においてどうしても避けがたい「関心の低下」に分類した。また、原発事故後に行われた賠償・補償をめぐる意見を賠償・補償(分類⑦)に分類した。最後に、現在ならびに将来の子どもと母親自身の健康に対する影響をまとめた。もっとも、健康影響は現段階では、因果関係が定かではないが、母親の子どもの現在と将来の健康影響に関する意見を網羅的に取り上げ紹介する。上記の8 つの項目の分類の論拠も重要であるが、他の項目との有機的なつながりもまた重要である。そこで、8 つの項目の特徴とこれら全体の傾94( 94 )