ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

ページ
87/198

このページは 中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号 の電子ブックに掲載されている87ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

一定の信頼性が求められるとともに,複数の尺度間で共通項目が存在することによって人工的に作り出される尺度間相関のことを考慮すれば,この単純性は適用領域に対して適切なレベルにあると見ることもできよう。また,主成分分析に比して説明力の低下が著しいことも問題となろう。本研究の適用例で採用した4 クラスター解の主成分分析に対する効率,約93%(図6)を高いとみるかどうかには議論があるであろう。しかしながら,負荷行列から因子ごとに目立った項目を選択して単純和によって尺度構成を行うという手続きでは,さらに多くの説明力を切り捨てていることも考えるべきであろう。確認的分析に採用したresampling の方法についても検討の余地があろう。典型的なresampling 法であるbootstrap 法は,通常,定められたモデルにおいてパラメータ推定値の標準誤差を求める方法として用いられるのに対し,本研究ではクラスタリングの安定性という観点で使用している。こうした使用法は筆者の知る限りあまり例がないようであり,理論上の問題がある可能性もある。また,resampling の試行数が200 というのも,十分であるかどうか検討の余地があろう。ただ,定められた因子解の標準誤差よりも,因子の成立自体とその安定性,さらに個々の項目の的中率という3 つの観点で評価できる個々での用法は魅力的であり,何らかの改善を行ってでも維持することを望みたい。最後に今後の発展の方向について触れておこう。まず,2 節で触れた部分的仮説(partial hypothesis)の導入の問題がある。この方法では,幾つかの項目を特定のクラスターに固定して動かさないという簡単な方法で部分的仮説を導入することができる。この方法の実データでの検討は期待のもてる方向である。次に,残余項目をアルゴリズムの中で排除していく方法を考えることである。これには,4 節で触れたα 係数の和の最大化を基準とした方法(TenBerge & Hofstee, 1999)が考えられる。ただし,この方法の実用化には多くの問題があり,現行の方法での運用の工夫とあわせて慎重な検討が必完全単純構造・主クラスター成分分析・resampling による確認(村上) 85( 85 )