ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

ページ
86/198

このページは 中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号 の電子ブックに掲載されている86ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

法を提案した。この方法の幾つかの性質を証明するとともに,実データへの適用を通じて一定の実用性を示した。さらに,resampling による確認的分析によって,解を多面的に評価する方法を導入し,これについても実データで効果を確認した。最終的に,若干の項目の削除を行った上で,単純和による尺度構成とその信頼性の評価に至るプロセスの一例を示した。このように,ここで提案した方法は,ある程度の実用性を示したが,多くの批判がありうることも事実であり,ここではまず,その幾つかについて検討しておこう。まず,この方法が単純であり,近年数多くの研究があるsparse PCA(たとえば,Jollife, 2002)のアルゴリズム開発の成果を考慮していないことが指摘される。ただ,本研究が目的としているのは,項目反応の単純和としての心理学的尺度構成の方法であり,比較的大きな分散を説明するとともに,ほぼ等質的な重み(この方法では負荷量に比例する)をもつ解が求められるから,本研究の方法は,その目的には十分であるとも考えられる。標本に対して変数の数が著しく多いなど,より厳しい条件のデータや,非常に説明力の小さい主成分に着目する必要があるといったケースでは,本研究の方法の効果には限界があって当然である。次に,本研究で採用したアルゴリズムが,単純なhill climbing 法であり,極大の問題をうまく回避できていないのではないかという問題がある。これについても,焼きなまし法や遺伝的アルゴリズムのような進んだ方法(たとえば,Givens & Hoeting, 2013)よりも,3 節で示したアルゴリズムはコーディングが簡単で頑健であり,十分な反復数を確保する限り,本研究が想定しているような適用場面では十分であるように思われる。さらに,質問項目への反応には多様な影響要因が考えられる(たとえば,村上,2008)心理測定データに対して,完全単純構造という制約条件は厳しすぎ,実態を捉えていないのではないかという批判がありうる。しかし,これも最終的には単純和としての比較的少数の尺度が目標であり,そこに84( 84 )