ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

て煩雑である。因子抽出と回転が別のプロセスになることの理由の説明も簡単ではない。また,それぞれの段階で必要となる数理的知識は不必要に多く,教育上の隘路となる。特に,回転に関しては,因子分析の弱い環,あるいは「因子分析における最も古くて最も困難の多い問題」と言われることもあり(Harshman & Lundy,1984 ;p.122),できれば回避したい手続きである。2)回転に対応して,出力も複数あり,かつ相互の関係は単純でない。特に,プロマックス回転のような斜交回転では,SPSS のような統計ソフトウェアにおいて,回転前の負荷行列,因子を独立変数とし個別変数を従属変数とする標準偏回帰係数の行列であるパターン行列,因子と個別変数との相関係数である因子構造行列がまったく同じ形式で出力され,ときに誤りの原因となる。通常,パターン行列が解釈されるが,これが偏回帰係数であることは,それらの大きさを評価するのに困難にする(あまり指摘されていないが)。3)因子数の決定が難しい。因子数を1 だけ増減することは,1 つの因子が2 つに分離したり,2 つの因子が癒合したりするような結果になる,すなわち,因子構造は階層構造をもっていると見られることが多いが,場合によって,因子数の変化にともなって大きな「組み替え」が生起することがある。この現象の説明は難しく,ほとんどの解説書にも書かれていないが,それに気づいたユーザーを戸惑わせることになる。4)その一方で,探索的因子分析が出力する負荷行列が説得力を持ちすぎることも問題になる。すなわち,あらかじめ緩やかな仮説を持っていたとしても,因子分析の結果はそれを忘れさせ,因子分析によって得られた項目クラスターがまったく疑う余地のないものとして受け入れられてしまう可能性も高い。これは,探索的因子分析の概念形成の方法としての強力さ(村上,2008)を示すものであるが,こうした複雑な手続きの結果得られた負荷行列には当然標本誤差が加54( 54 )