ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

応を取りいれることができ、それらの反応をシンボルによって社会的反応のなかに呼びおこすことができる限り、彼は、心的過程が進行する精神を所有する。その精神の内的構造は、その個人が、彼の所属する社会から取りいれたものだ。(Mead 1934 : 270= 1973 : 282-83)16 「共通の観念」とあるが、異なった成育史をもつふたりの人が同一の観念を持つとは考えられず、ミードがそうした機微を考慮していなかったとは思えない。それゆえここは、相互作用のなかで「共通の観念」として機能する程度の共通性のある観念を言いあらわす言葉の短縮形として、この表現が現れていると解すべきであろう。17 この語は意味内容から「共有意味世界」と訳されることもある。Mead(1936=1994)参照。ニュアンスの違いはあるものの、ミードのもちいる英語のdiscourse とハバーマスにおけるドイツ語のDiskurs(討議)の語源的な共通性も興味深い。18 本引用文中の[ ]内は訳者(稲葉三千男・滝沢正樹・中野収)による補足。19 政治的討議への市民の参加の度合い、合理的で批判的な討議の活用という二点に関し、ハバーマスの論じる公共圏に値するような状況は、アメリカの政治社会にかつて存在したことはないと述べる論者さえいる(Schudson1992)。20 この部分では、public という単語の使用を通じ、ハバーマスの公共圏が、ゴッフマンの『集まりの構造』(Goffman 1963=1980. Behaviour in Public Places)などでの議論の内容とも、接合されるのかもしれない。21 いうまでもないことだが、この表現はミルズの社会学的想像力の冒頭部分を意識したものであろう(Mills [1959] 2000=[1965] 1995)。22 このように公共圏の存続やその成立をめぐり印刷メディアの果たした役割を重視する視点は、分量としては少ないながらも『公共性の構造転換』にも見ることができる(Habermas [1962] 1990 : 28-41=[1973] 1994 : 26-38)。ただし著作としての本筋は、対面的な相互作用としての討議を重視する文芸的公共圏から政治的公共圏への、質的発展を論じる部分だったことも確かである。23 社会的世界研究以外に、SI およびその隣接アプローチであるエスノメソドロジーに由来する構築主義の社会問題研究も、公共圏に関する研究として再編成できるだろう。構築主義では研究史の進展のなかで言説研究に偏る傾向が前面に出てしまったが、当然、構築主義の外部にいる研究者が、言説研究に集中するという縛りにとらわれずにその研究成果を利用することは可能だろう。40( 40 )