ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

に向かう社会学の変容を論じる際などに、時代のなかで重要な影響を与えあったはずの行為者の思想や行動の意義を、彼らの手になる諸作品を手がかりに、歴史的、実証的に論じる文脈が与えられる。ただし『公共性の構造転換』(Habermas [1962] 1990=[1973] 1994)で、50 年以上前に提示されたハバーマスの意図を継承するためには、個々の研究者の視点から、その後の歴史、社会学の進展を受けとめて世界史、近世史、近代史を再構成するよう改めて努力する必要がある。ただし本稿では、ハバーマスの概念をSI の理論的蓄積に取りこむうえでの諸注意を示すことにとどめ、「市民社会をもたらす公共圏」の構成の具体的な叙述は稿を改めて提示することとする。まとめヨーロッパ社会を席巻し、地上の他地域、他国家へも順に影響を広げた市民社会をもたらす公共圏は、ハバーマスが『公共性の構造転換』(Habermas [1962] 1990= [1973] 1994)で述べるように、政党の成立、選挙制度の拡充、一国を超えた国際的企業体の発達などの流れのなかで堕落し、政治的プロパガンダと商品に関する広告を産業として伝えるマスメディアにより方向を歪められたまま、現在に至った。しかし帝国主義的植民地経営、多国籍企業の支配が横行するグローバリズムの世の中にあっても、個別の医療、福祉、保健、犯罪、非行、教育などの社会問題について、時宜に応じた促しにより、社会的公正、正義が損なわれているという状況が集合的に認識されるごとに、特定の問題をめぐる社会的世界としての公共圏が立ちあがる。社会問題の実証的研究における社会的世界論の有効性は変わらず、公共性の高い社会問題を捉える認識枠組もそこに組みこまれているので、それを公共圏論としてリニューアルする研究上の利得はそれほどない。逆に、公共圏について経験的に観察、考察する場合には、ネットワーク自体の存市民社会をもたらす公共圏と社会的世界としての公共圏(鎌田) 37( 37 )