ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

文脈を検討する研究法が提唱される(Fujimura 1996 ; Clark 1998, 2005 ;Foucault 2004=2008)。また生医療化(biomedicalization)や、テクノサービス複合企業(TechnoService Complex Inc.)と医療組織の癒合を取りあげ、先端医療が開く社会コントロールの領域の批判的研究も提唱されている(Clark et al. 2003)23。ここで注意すべき点は、まず英米仏のブルジョワ革命期に成立し、ヨーロッパ、また人類全体に影響を及ぼす大きな射程をもつものだったが、19世紀から20 世紀にかけて構造変容したとハバーマスが『公共性の構造転換』(Habermas [1962] 1990=[1973] 1994)で考えた公共圏と、次に20世紀から21 世紀にかけて、公共の論点について一般公衆に向けた議論をおこない、政治的、社会的態度の変容を目指すべく立ちあげられる多数の小さな公共圏との区別である。便宜的にここでは前者を、憲法によって市民社会の実質を守ろうとする公共圏と考え、「市民社会をもたらす公共圏」と呼ぶ。そしてSI における社会的世界と同様に考えられる後者を、「社会的世界としての公共圏」と名づける。このように見ると、ハバーマスが1990年代に入って理論的に位置づけた社会的世界としての公共圏は、実は公共圏という面に特に注意をはらわない形で、従来のSI の医療、科学、犯罪、非行、福祉、社会問題研究などにおいて多様に考察されてきていることに気づく。したがってSI 理論において公共圏を論ずる利点は、むしろ、ヨーロッパの歴史において、18 世紀後半に成立した「市民社会をもたらす公共圏」という大規模な社会現象を捉える概念を、導入することにある。そこで可能になる考察は、扱っている時代の特性から19 世紀の生物学に影響を受けた社会進化論、20 世紀社会学の近代化論などと似通ったものになると考えられるかもしれないが、SI の社会的世界論とハバーマスの市民社会をもたらす公共圏という発想を組みあわせることで、それにとどまらない清新な視角が与えられる。すなわち、17 世紀頃からの印刷メディアの発展と市民社会の到来を関連づけ、20 世紀に入ってからの社会調査の成立36( 36 )