ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

向を中心に豊富な例示を与え、研究の発展を促した。この時点でストラウスが挙げた社会的世界の例は、オペラ、バレー、野球、サーフィン、芸術、切手収集、登山、カントリー・ミュージック、同性愛、政治、医療、法、産業、数学、科学、カトリシズムなどであり、空間、対象、技術また技巧、イデオロギー、(他の社会的世界との)交錯、(メンバーの)リクルートなどを通じ、もとのものから分かれて下位世界に分化、ほかの社会的世界と合流し、新たな社会的世界として勢力を拡大する(Strauss 1978 : 121,1982 : 172, 1984 : 124-125)。ストラウスの三つの論文自体は、当時、研究が進んでいた芸術世界論の研究(Becker [1982] 2008)と連動して、芸術、芸能、趣味の世界の事例に関して紙数を費やして考察している。また1970、80 年代に勢いがあった組織研究における資源動員論の動向を意識したものにもなっている。ストラウスはバーニー・グレイザーとの合作で終末期医療の研究に取りくみ、グラウンディド理論と呼ばれる質的研究の方法論を提唱している(Glazer & Strauss 1967=1996)。これは、既成の理論に反する反例を探して新たな理論的定式化を図るアプローチであり、カール・ポパーらの科学論における論理実証主義(Popper 1959=1971)の枠組を、質的研究に導入したものと見なし得る。この方法論は看護、福祉分野の研究において広く活用されてきた。またストラウスたちの精神病院に関する共同研究で提示された「交渉された秩序」アプローチは、社会現象や社会的相互作用を過程のなかで現実的に捉えるため、交渉に参加する人々が準拠枠として参照する交渉文脈を、ケース・バイ・ケースで丁寧に分類整理することを提唱している(Strauss et al. [1964] 1981 ; Strauss 1978a)。実証研究としての社会的世界論では生殖医療、癌研究などの医療、科学分野についてのものがあり、さらに新しい「状況分析(SituationalAnalysis)」と呼ばれるアプローチにおいては、1990 年代以降に出版が進んだミシェル・フーコーの講義録の視点を取りいれ、いわゆる生政治(bio-politics)に関し、資料の美的、感性的な分析をおこないつつ歴史的市民社会をもたらす公共圏と社会的世界としての公共圏(鎌田) 35( 35 )