ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

=1996 : 366=2003:下96-97)22こうした用法の変遷を経て公共圏概念は、すでに見た『近代未完のプロジェクト』の序文における、「そこにおける立場を通じて態度の変化というものがもたらされるはずの公共の議論の場」「シビル・ソサエティに根をおいた公共の議論の場という散漫なネットワーク」(Habermas2000 : xiii, ix)などの、現代社会に関する議論にも導入しやすい定義に到達する。ここまでくると、福祉、医療、軍事、経済、教育など国民生活にかかわる公共的な事柄を論じあう社会運動の場を、すべて公共圏と捉えて分析することができるようになる。しかし法社会学を拠点とするハバーマスの議論は、現実社会の分析においては時評的な考察にとどまる傾向があり、腰を据えて特定の問題領域の実証研究に向かう際には、社会学の従来の分析枠組との接合を考えるべきであろう。この面に関し、SI の伝統では社会的世界論の枠組が提起されてきた。そしてこのタイプの分析では、医療や科学研究の領域での研究の蓄積がある。4、社会的世界論社会的世界概念は1920 年代のシカゴ・モノグラフなどにおいては、特にはっきりした定義もなく、生活者が身を置く社会的環境とほぼ同義のような形でもちいられていた。この概念はタモツ・シブタニの古典的な二本の論文(Shibutani 1955, 1962)で、ロバート・マートンらが提示して注目を集めていた準拠集団論(Merton 1968 : 279-334=1961 : 207-256)とも結びつけられ、理論的な位置づけを与えられた。アンセルム・ストラウスは、SI 研究学会の研究年報Studies in Symbolic Interaction に発表した三つの論文(Strauss 1978, 1982, 1984)で、社会的世界概念を実証研究に応用するための検討をおこない、芸術や趣味の世界についての研究動34( 34 )