ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

たとえばブルジョワ親密圏から文芸的公共圏が生じ、さらに政治的公共圏へと発展するという流れに関しては以下の事実が対置される。フランス革命後、為政者となった革命指導者たちは、早い時期にジャコバン・クラブなどの民衆の政治的議論の場の閉鎖を模索し、貴族による大規模な土地所有が廃止されることと同様に、特権の排除を目的として、職人たちの同業組合などの中間集団が禁止された。そしてフランスにおいては、王に仕える臣民から主権者としての国民になった個々人が、中央集権化した国家にじかに対峙する状況が生まれる。そこでは人々が国家に対抗して連合する中間集団の結成が阻害されたと考えられる10。すなわち革命期に民衆たちをも巻きこんだブルジョワ公共圏は、革命政権が短期間に自壊してナポレオンによる帝政がしかれる歴史的経緯のなかで、あっという間に収縮して有名無実のものとなった。また絶対王政下で組織された科学アカデミーでは、表面的には王の統治に奉仕するような議論だけが認可され出版されたような体裁になっていた。しかし実態としては、王や側近が細かい科学的議論のすべてを追いきれるものではなく、アカデミーに組織された科学者たちが審査できる範囲で認定された科学的事実が、王の承認を得て出版されるという形を取っていた。すなわち、大規模化し中央集権化した国家運営の進展とともに、科学的手続きを踏んだ事実や法則の認定が導入されていく。現在の科学の自律的営みの萌芽がここに見られる。こうした指摘も絶対王政下で抑圧された民衆に関する通俗的理解を覆すものだろう。こうした科学アカデミーでの活動を土台にコンドルセのような数学者、科学者が革命期の指導的な理論家として頭角を現したのである(隠岐2011)。こうした動きは王政の内部に根ざしており、文芸的公共圏や政治的公共圏などの概念を導入せずとも論じられる。ハバーマスの見解では、英米仏のブルジョワ革命期に成立した公共圏は、19 世紀以降、産業革命の進展とともに堕落する。すなわち、普通選挙、婦人参政権の達成に取り組む政党主体の政治へと制度が整除され、産26( 26 )