ブックタイトル中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

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概要

中京大学現代社会学部紀要2014第8巻第1号

は独裁者となったクロムウェルの神聖政治の時代に、チャールズ1 世が処刑され、クロムウェルの死後、王政復古してチャールズ2 世が即位し、立憲君主制の議会制がしかれるというマクロな制度変化が観察された。そしてアメリカでは本国に叛旗を翻し独立を宣言した植民地政府による戦争がおこなわれ、フランスでは蜂起した民衆の支持を得た革命政府が組織され、ルイ16 世やその家族を処刑したのちに、革命指導者たち自身もお互いを糾弾しあって断頭台の露と消え、国民的人気を得た軍人ナポレオン1世が帝政をしいて即位するものの、短期間で失脚するといった歴史過程を論じるのが、通常の政治史の教科書的な展開である。しかしハバーマスはそうした政治史のドラマに埋没するのではなく、民主主義のインフラストラクチャーとなった討議の場所、すなわちブルジョワ公共圏をめぐる社会史に集中する。その概要は以下の通りである。18 世紀には、絶対王政下で徐々に振興しつつあった産業、商業の発達の担い手として財を蓄えたブルジョワの家庭では、多くの使用人を従えて家事を取りしきる主婦が中心となり、育児や家事全般に精力を注ぐブルジョワ親密圏が成立する。小説、詩歌などの文芸作品を享受、鑑賞し、その感想を論じあうつどいが、家庭内にしつらえられた客間(サロン)で開催されはじめ、上流貴婦人が主宰する文芸的公共圏が成立する。また十字軍の遠征やアラブ人によるウィーン攻囲によってもたらされた薫り高い飲料、コーヒーを味わう喫茶の習慣が広まる。各種の雑誌、印刷物が閲覧でき、政治的討論の場としても活用されたコーヒーハウスがサロンと同様の役割を果たし、多様な階層の人々が政治的意見を戦わせる政治的公共圏が成立する。それは階層を超えて政治的議論をおこない、王政打倒の論説を流布させるコミュニケーションの場である。そこで指導者たちに扇動された民衆が蜂起して、ブルジョワ革命がもたらされたとハバーマスは考える。こうした捉え方はきわめて一面的かつ図式的であって、歴史資料の精査によって多方面から切り崩されてきている。市民社会をもたらす公共圏と社会的世界としての公共圏(鎌田) 25( 25 )