後発産業化諸国の
中等教育拡大の国際比較研究

プロジェクト概要

 本プロジェクトは、日本が経験した後期中等教育(高校)の拡大とその後の社会変容を、世界各国、とりわけ日本よりも後に産業化してきた国々と比較研究を行っております。このような比較研究を通じて、日本という事例の一般性と特殊性を明らかにしていきながら、世界の後発産業化諸国の中等教育拡大過程の包括的理解を目指し、世界の社会発展に寄与できる研究となることを期しております。

 日本は戦後30年の間に中等教育(中学校・高等学校)を急拡大させました。中学校は世界でも例を見ない早さで義務化を達成しました。高等学校も1972年には進学率が90%を超えて、「準義務化」して40年が経ちました。私たちは、このように高校に人々が通うことが当たり前になった社会を「高卒当然社会」と呼び、そのような社会がどのようにして出来上がったのかを教育社会学の研究として描き出しました(香川めい・児玉英靖・相澤真一『<高卒当然社会>の戦後史』,2014年,新曜社)。

 しかし、現在、日本は拡大から縮小への新たな局面を迎えています。少子化のなかで、高校の統廃合も進んだ結果、全日制高校に行きたくても行けない生徒が急増してしまった県の事例や私立高校の「倒産」がニュースでも取り上げられるようになってきました。



 本研究では、このように日本社会で見られてきた中等教育拡大と社会変容をめぐる特徴と問題点を、現在、経済発展や社会変化の只中にいる国々との比較調査をしていきます。特に、公立高校/私立高校、普通科高校/職業科高校という2つの軸で各国を比較することをその特徴としています。

 この比較研究を通じて、世界で急速に変化する政治・経済状況のなかで、国民全体に中等教育が行き渡る過程に、どのような共通性と違いがあるのかを明らかにし、英語、日本語の両方で発表していきます。そして、日本を起点とした国際比較研究を確立していくことを目指しております。


これまでのプロジェクト実績

 

平成25年(2013年)実績

4月
プロジェクト開始。
6月 日本教育社会学会台湾訪問代表団の一人として、日本と台湾の比較研究を発表。
8月 ベトナムにてインタビューおよび資料調査を実施(研究協力者の伊藤未帆による)
11月 イギリス・オックスフォード大学にて、海外研究協力者との研究会を実施。

平成26年(2014年)実績

2月 ベトナム・ハノイとシンガポールにてインタビュー調査を実施する。ベトナム教育訓練省およびハノイ市内の私立高校、シンガポールの中等教育学校およびITEを訪問。
3月 台湾にてインタビュー調査を実施する。台北と台東の学校(公立/私立、普通科/職業科)合計7校を訪問。
5月 イギリス社会学会にて、日本・台湾・イギリスの比較研究を発表。
7月 国際社会学会世界社会学会議横浜大会にて「中等教育のグローバルな拡大」のセッションを組織し、日本、中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナム、ラテンアメリカの研究報告から構成された部会を開催。
8月 ベトナムの公立高校のインタビュー調査を実施(研究協力者の伊藤未帆による)。
9月 日本教育社会学会にて、日本、台湾、ベトナムの比較研究を報告(研究協力者の香川めい、伊藤未帆、劉語霏による)。

平成27年(2015年)実績

3月
シンガポールにて調査を実施(研究協力者のシムチュンキャットによる)。国内研究協力者による全体研究会を実施。
5月30日 本プロジェクトの国際シンポジウムを中京大学名古屋キャンパスにて開催予定

本プロジェクトにかかわる研究業績

香川めい・児玉英靖・相澤真一
『<高卒当然社会>の戦後史:誰でも高校に通える社会は維持できるのか』
(2014年,新曜社)