高橋プロジェクト研究
「マーケティング3.0理論の展望と課題」

 高橋プロジェクト研究は、マーケティング論を中心に広告、流通、電子商取引や電子政府・自治体論など様々な分野に精通した高橋教授に指導いただいています。これまでに大学での講義や自主的な勉学で身に付けた知識や能力を最大限に活かしながら、ゼミ内の各班で設定したテーマに関連する理論をもとに、個々人が課題を立て、現状分析、政策提案までの研究を進めています。

 今回、私たちはドイツ語での論文や報告書を含む、外国の文献をはじめ、多くの文献を読み込み、マーケティング3.0理論について先生やゼミ生と議論を重ねました。

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 マーケティング3.0理論とは、近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー氏が新たに提唱した理論です。コンセプトは「どのようにしてこの世界をより良い場所にするか」という価値主導のマーケティングです。

 この理論が登場した背景には、現代は地球温暖化や貧困を初めとする社会課題が叫ばれ、市場もめまぐるしく変化するとともに個人の価値観も大きく変化し多様化していることが挙げられます。コトラーは「現代では単に自分のニーズを満たす製品やサービスではなく、製品の裏側にあるストーリーや特定の製品や人に対する共感(マインド・ハート・精神)の追求が重要になってくる」と、述べています。

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 研究を進めると、日本はマーケティング後進国である、未だに消費者志向のマーケティング(マーケティング2.0)を行っている、など日本の企業が行っていることが遅れていることが分かりました。その代表的な事例が、携帯電話の開発における米Apple社とSONYなどの国内メーカーとの比較です。

 国内メーカーの多くは、「消費者が望んでいるもの」に重点を置いて製品を開発していました(マーケティング2.0)。一方、Appleは、「(消費者と開発者も含めた)私たちはこういうものがあると便利」という発想で製品を開発していました(マーケティング3.0)。国内メーカーが既存の携帯電話をベースに改良を検討している中、Appleは未知なるものを創造しようとしていたのです。結果的に、膨大な予算を費やし、消費者の意見をしっかり把握しようとしていた国内メーカーの健闘むなしく、現在はiPhoneが独走状態です。

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 私たちは、こうした日本のマーケティングにおける課題発見、加えてマーケティング3.0理論自体の課題へ問題意識を広げました。ドイツのCmiAという組織を先行事例に、日本企業のあるべき姿や将来像を提案としてまとめ、発表しました。

 賞を頂けたことよりも、私たちは、研究活動や先生・ゼミ生との多くの議論を通して、物事を広く深く考えること、お互いの意見が一致しない場合はとことん議論をすること、という学生として何にも代えがたい価値ある経験を得られたことを、大変うれしく思います。

 最後になりますが、この場をお借りして最後まで親身になって研究指導してくださった高橋先生に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

(総合政策学部3年 内田将平、島津広祐)

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2016/04/08

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