体育学研究科・スポーツ科学部生がパラリンピック強化指定選手の体力測定
障がい者スポーツへの興味や関心深める

 私は、日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会が行っているフィットネスチェック(体力テスト)事業に参加しました。

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 スポーツ科学部教授で、私が所属する大学院体育学研究科応用スポーツ科学系の桜井伸二先生は、日本障がい者スポーツ協会の科学委員です。これまでも、障がい者スポーツに関する科学的な研究に関係し、またパラリンピアンをはじめとする障がい者スポーツ選手を対象とした体力テスト、動作分析などのサポート活動を行ってきました。2020年の東京大会が次第に近づき、障がい者スポーツ選手への支援が一層強化される方向にあります。その一環として強化指定種目選手のフィットネスチェックが行われています。中京大学も「日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会フィットネスチェック実施協力機関」として認定されています。

 桜井先生や私の他に、体育学研究科の鈴木栄子助手、吉村真美さん、仰梨江さん(修士2年)、佐分慎弥さん(博士1年)、高橋真菜さん(スポーツ科学部3年)、松波香穂さん(スポーツ科学部2年)らが参加・協力しました。私たちが参加した測定は、11月15日(至学館大学、身体障がい、陸上競技および車いすバスケットボール)、11月22日(中京大学、身体障がい、卓球およびアーチェリー)、12月5日(浜松市総合水泳場、知的障がい、水泳)、12月20日(伊豆サイクルスポーツセンター、身体障がい、自転車)、そして2月14日(講道館、視覚障がい、柔道)に行われ、対象者数は計80人ほどでした。全国的には今年度だけで計25回以上で、総勢400人以上のパラリンピック強化指定選手の測定が行われているそうです。

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 このフィットネスチェックの役割は、(1)体力データをもとに、選手の体力面の特徴や、必要とされるトレーニングプログラムに関する情報を提供すること、(2)選手の体力や競技別の体力特性に関するデータベースを構築し、中長期的な育成および強化に向けた科学的サポートを行うことです。

 まず、垂直跳びや握力、長座体前屈、反応時間、20mシャトルラン、皮下脂肪厚、大腿囲などの体格といった基本的なものを全競技種目共通で行います。しかし、車いすの選手の場合には垂直跳びや立ち幅跳びの代わりにメディシンボール投げや肩の柔軟性を計測し、また20mシャトルランの代わりに往復の5分間走を行うなど、障がいの種別によっては項目や方法を変更して測定する必要があります。また、競技団体からの要望に応じて専門性の高い種目が追加される場合もあります。

 私は、大学院で、専門種目であるハンマー投げの動作分析について研究してきました。授業で行ったことがあるとはいえ、体力測定を専門的に実施してきたわけではありません。周径囲や皮下脂肪厚などの形態計測をはじめとして、精度の確認を含め、事前に測定の練習を十分に行なってはいました。しかし、義足や車いすの選手を計る際、どう計測すべきなのか、あるいはどの程度まで身体に触れて良いものかと、不安になったり戸惑ったりすることが多かったです。また知的障がいの選手の周径囲を計測した時には、くすぐったいと感じてかなかなか計測できないこともありました。視覚障がいの選手に同意書へのサインを求める際に、自分でしてもらうのか、あるいは代筆を頼むのかなどについては、これまでほとんど考えたこともありませんでした。しかし、選手やコーチ陣の協力もあり測定はおおむね円滑に進められました。選手の意識も総じて高く、好奇心にあふれ、常に全力で取り組んでいました。計測後に皮下脂肪厚から体脂肪率への換算方法を尋ねてくる選手もいました。

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 選手の体力測定を通して、障がい者スポーツの世界の一部を垣間見るという貴重な経験ができました。そしてその多様性を感じることもできました。当たり前のことではありますが、「障がい者」という括りで一まとめにはできないことが実感できました。

 私の身近には陸上競技におけるパラリンピアンやデフリンピックを目指す選手がいます。このフィットネスチェックを通して陸上競技以外の種目の選手や指導者と出会えたことで、障がい者スポーツへの興味や関心が一層深まりました。2020年のパラリンピック東京大会へ向けて、日本代表選手の応援やサポートをするとともに、もし可能であれば今後も何らかの形で関わっていきたいと思います。

(体育学研究科修士課程2年 土方ありさ)

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2016/02/22

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