国際教養学部生22人がスペインで「海外課題研究」
パブロ・デ・オラビデ大学で語学習得しながら研究進める

 国際教養学部では専攻する第二外国語に基づきフランス、スペイン、ドイツ、ロシア、中国の5カ国に留学して、選択科目「海外課題研究」を行っている。語学の習得と、留学先の文化や社会に関連した研究が目的だ。今年度は64人が2014年8-12月の1セメスター(1学期間)にわたり履修した。

 スペインからは、パブロ・デ・オラビデ大学に留学した22人が、向上した語学力と研究の成果を得て帰国した。

【スペインにおける失業率と就職事情】

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 私は「スペインにおける失業率と就職事情」をテーマに研究しました。研究の目的は、スペイン人学生は自国の失業率の高さをどのように考えており、またそれが就職と関係するのかを知るため、そして失業率の高さ故に海外で実際に就職した人はいるのかを知るためです。

 スペインは2008年の世界的な金融恐慌により経済が悪化、それに伴って失業率も悪化し、現在深刻な状況におかれています。2014年度の失業率は約24%で、その中でも若年層(15~24歳)の失業率は50%を超えています。このような現状において学生たちはどこで就職しようと考えているのか等を知るため、留学中にアンケートを実施しました。アンケートはインターネット上において男女50人のスペイン人学生を対象としました。質問内容は次の6つです。1.「どこで何を勉強しているのか」2.「スペインの失業率についてどう思うか」3.「スペインで就職するつもりか。違うならばどこの国か」4.「その国で就職するのは何故か」5.「両親はどこで就職してほしいと思っているのか」6.「知り合いにスペイン以外で就職した人を知っているか。またどこの国か」

 次にアンケート結果をまとめました。対象学生はすべて専門学校、大学、大学院のいずれかで学んでおり、7割強が文系でした(質問1より)。スペインの失業率に関してはほとんどが非常に高い、危機であると回答しました。最も印象深かった意見は、「高齢者も若者も多くの人が影響を受けている。お金が払えないために家や大学からも追い出され、食料を求めゴミを漁っている」というものでした。想像以上にスペインの失業率の高さは深刻であるようです(質問2より)。

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 学生たちの就職の動向としては、48%がまずはスペインで職を探し、なければ多くはヨーロッパなどの海外で、次の38%はヨーロッパなどの海外でと回答しました。残りの14%はスペインでと回答しました。最終的に海外で就職としても、第一にスペインで探す学生は全体の62%も占めていました(質問3より)。その理由として、就業機会の少なさを言いながらも、スペインはやはり自国でありスペイン語は母国語であるから、また家族や友人がいるからと回答しました。海外を希望する学生の意見としては、就業機会の多さや自身の能力を活かすため、が挙げられました(質問4より)。彼らの両親の意見としては、7割以上がスペインで就職してほしいと思っており、このような経済状況でも近くにいてほしいのが本音のようです(質問5より)。知り合いにスペイン国外で就職した人を知らないと回答したのは4名のみで、その他の学生は一人一か国以上回答しました。集計すると1位がイギリス、2位がドイツ、3位がフランスとアメリカ合衆国でした。また地域別に区分してみると全回答のうち67%がヨーロッパ圏で就職をしていました。ここから、スペインがEUに加盟していることでの移動のしやすさや、言語に捉われず就職先を選んでいる、ということが言えると思います(質問6より)。

 以上のアンケート結果から分かったことをまとめました。失業率の高さを懸念してほとんどの学生が海外での就職を希望していると思っていましたが、実際には学生の約6割がスペインでの就職を希望していました。残りは海外での就職を希望していましたが、理由としてはやはり自国の就業機会の少なさが原因の一つとなっているようです。また両親の約7割が自国の失業率の高さに関係無く、スペインで就職してほしいと回答。そして実際に海外で就職している人は大勢おり、これはスペイン人の持つ技術や知識が多く海外に流れてしまう、頭脳流出にも繋がる問題であると言えるのではないでしょうか。

(国際教養学部3年 岩尾満帆)

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2015/05/13

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