文学部「文芸創作コンクール」入賞4作品が書籍に
「名古屋キャンパス・ライブラリーサービスセンターへ読みに来て」

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 文学部が主催する文芸創作コンクールの選考が1月に行われ、3月12日、受賞者に入賞作品を1冊にまとめた本が手渡された。応募6作品の中から、可知秋代さん(2年)の「縁の下のうまいもの」が入選、渡辺悠楽さん(2年)の「生まれた十四歳」が二席に選ばれた。高山裕紀子さん(4年)の「ロナルドの現実」、大脇絵里さん(4年)の「白くて淡い」がそれぞれ準入選。

 同コンクールは、作家志望や文章力を伸ばしたい同学部の学生を対象にした短編小説のコンテストで、同学部の教員が審査する。今年で10回を数え、入選・準入選の作品は書籍として本学図書館にも並ぶ。過去には、舟橋聖一文学賞を受賞した河島光さんを輩出している。審査委員長の酒井敏・文学部長は「今回の応募作にはミステリーが多く、読者を意識した応募者の成長と技巧的な進歩がうかがえた。新しさや面白さを追究して、より野心的な試みを期待している」と講評した。

■入選一席「縁の下のうまいもの」
 私は今年度の文学部文芸創作コンクールにおいて、「縁の下のうまいもの」という応募作で入選第一席をいただきました。文学部生を対象としたこのコンクールで選ばれたことを大変嬉しく思っています。私の書いた作品は、鉄道ファンが集まる鉄カフェ「トロッコ」を中心とした場面・登場人物で構成されています。ヒロインの大学生、橘志希が働くトロッコには老若男女さまざまな客が来店しますが、そんな客たちの一人が志希のサークル仲間、十和田頼人でした。彼の抱える悩みがトロッコに持ち込まれたことから物語は動き出します。鉄道に関すること、タイトル通りの美味い物など、いろいろなことを盛り込みながら、お悩み解決に向かっていくというストーリーです。

 本作品では、私にとって初の試みも取り入れました。その試みとは「パラレル(平行)なストーリー進行をする」ことです。一見すると無関係に見える2つの場面を交互に登場させ、それぞれに話を進めますが、終盤で1つの世界に融合させようとしています。タイトルに込めた「縁の下の(力持ち)」である「美味い物」と「上手い者」を介し、最後はすべてが同じ世界で展開されることを目指しました。これは、美味しい食べ物や人間関係は縁を取り持つ存在であるという私の考えを取り入れました。

 この試みを思い立ったのは、前年度の文芸創作コンクールで知り合った方々との交流の場でした。私と同じように小説を書かれる方と忌憚なく意見交換をしていて、パラレルで進行する物語を書いてみたくなったのです。ですから、このコンクール、ひいては大学での学びや新たなる知識は、私の創作意欲を刺激するに十分なものだったと言えます。苦手としてきた比喩表現も「レトリック論」などの対応する講義を受講し、ずいぶんと改善されました。今後も知識欲を旺盛に、豊かな文章力や感受性を得られるよう学んでいきます。

 私の作品「縁の下のうまいもの」に、多少なりと興味を持っていただけましたら、どうぞライブラリーサービスセンター(名古屋キャンパス0号館3階)の蔵書をご覧ください。一人でも多くの方にお読みいただければ幸いです。

(文学部 言語表現学科2年 可知秋代 PN:工藤竜海)

■入選二席「生まれた十四歳」
 私が今回、文芸創作コンクールで入選を頂いた「生まれた十四歳」は、14歳の中学生を主人公として物語が進みます。私が普段、読んだり書いたりするのが専ら児童文学なので、今回もその路線で創作をしました。

 構想のきっかけは、講義で扱われたとある文学作品でした。その作品は、主人公を含め関わる登場人物が、それぞれ違う形で「眠る」という行為に特殊に関わっているという、共通点を持っていました。それを受け、ならば私は「泣く」という行為で関連付けようとし、主人公の女子中学生は泣くことができず、一緒に暮らす叔母さんは涙もろい設定にしました。そこから、どうして主人公は泣くことができないのか、それによって主人公はどのようなことをするのか、を考え書き上げました。

 書くということは、私にとって、とても楽しいことです。それが今回、このような場で評価をされ素敵な賞を頂けたことは、とても喜ばしいことです。これからも大学でいろんな文学作品に触れて、創意工夫をしていきたいです。

(中京大学 文学部日本文学科 2年 渡辺悠楽)

■準入選「ロナルドの現実」
 準入選を頂けたことを大変嬉しく思います。

 私の作品「ロナルドの現実」は、ネットの世界へはまっていく大学生が主人公です。ネットで見つけた居場所は本当に思った通りの場所なのか、をテーマにしています。些細なきっかけでネット中毒になった主人公の生活が、少しずつ変化していく様子を書きました。

 文芸創作コンクールで賞をいただいたのは、今回で3度目です。初めは1年生の時でした。その時の私は、作品のリアリティを特別意識することはありませんでした。しかし講評を読み、同じ年頃の学生が書いた作品を読み、レトリックの授業を受けてみて、「リアリティのある描写で書くこと」の大切さに気付きました。基本的なことが一番重要なのです。この作品は私の4年間の大学生活の上に成り立っています。お手隙の際に手に取っていただけると幸いです。

(文学部 言語表現学科4年 高山 裕紀子 PN:鷹山裕紀)

2015/04/09

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