国際教養学部生2人がロシアで「海外課題研究」
サンクト・ペテルブルグ大学で語学習得しながら研究進める

 国際教養学部では専攻する第二外国語に基づきフランス、スペイン、ドイツ、ロシア、中国の5カ国に留学して、選択科目「海外課題研究」を行っている。語学の習得と、留学先の文化や社会に関連した研究が目的だ。今年度は64人が2014年8-12月の1セメスター(1学期間)にわたり履修した。

 ロシアからは、サンクト・ペテルブルグ大学に留学した2人が、向上した語学力と研究の成果を得て帰国した。

【ロシアにおける非言語コミュニケーション】

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 ロシア人に対して「冷たい」「怖い」などの印象を持っている人は多いと思います。なぜこのようなイメージがあるのか、「ロシア人は微笑まない」というのは本当なのか、疑問に思ったため、課題研究のテーマを「ロシアにおける非言語コミュニケーション」に設定しました。テキサス大学の名誉教授であるマーク・ナップは非言語コミュニケーションを「身体動作」「身体特徴」「接触行動」「近言語」「プロクセミックス」「人工物の使用」「環境」の7つに分類しました。これをもとに、留学中に地下鉄やバス、街中、店内など様々な場所で周りの人のしぐさや行動に注意して気づいた非言語コミュニケーションをこれらの特徴に当てはめて考えました。

 例えば、「身体動作」の非言語コミュニケーションに分類される「視線」についてですが、ロシア人は人と話すとき、特に相手の話を聞くときに目をじっと見ます。目を見ることで、話を聞いているということを示し、相手に安心感を与えます。また、公共交通機関でも同じ行動が見られます。エスカレーターでは片方によって立つのがマナーだが、2人組の場合、下の段の人が後ろを向いて話します。ロシアのエスカレーターはとても長いため物理的な問題もあると思いますが、目を見て話す習慣も影響していると考えられます。バスの中では、2人組の多くは横並びではなく向かい合って座ります。これも相手の表情や目を見て会話をするためだと考えられます。

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 また、街を歩いていてロシアでは「微笑む」習慣がないということに気づきました。「微笑み」は「近言語」に分類されます。ロシアでは日本と違い、笑顔で接客をするということは少ないです。しかし、ロシア人は笑うことが嫌いなわけではありません。街にはコメディー劇場があり、日本で言う「お笑い」のようなものも人気があります。テレビを見ている時や話している最中に大声で笑ったりすることもよくあります。面白いことがあれば笑うし、必要のないときは笑いません。つまり日本の愛想笑いのような文化はないのです。「愛想笑い」は日本では相手に安心感を与えるものだが、ロシアでは不信感を与えます。例えば謝られる時、日本人は微笑んで答える人が多いと思います。微笑むことで、本当に怒っていない、許したというサインになるのですが、ロシアでは口で言っていることが重要なため、微笑む必要がないのではないかと考えました。

 一方スキンシップは「接触行動」に分類されます。キスやハグなどの行為は、若い女性も行っています。若い男性は出会った時と別れる時のあいさつ代わりに握手をしたり、グーにした手をぶつけたりします。握手は日本でよく見られるような握手とは違い、互いの胸のあたりで行います。言葉は口にしないことも多いです。日本では、ビジネスの場以外では握手さえもほとんどしませんが、ロシアでは親しい相手とはスキンシップが多いと感じました。

 ロシア人はよく、「冷たい」という印象を持たれがちだが、決して冷たいわけではありません。困った時、周りの人に声をかければ誰でも話を聞いてくれます。日本人は、優しいと言われる一方で、無関心で冷たいとも言われます。その点では、ロシア人と日本人は似ているのではないでしょうか。ロシア人は欧米人のように誰にでも明るくフレンドリーではないが、やはり日本人よりも表現が豊かだと感じました。一方で日本人と似たコミュニケーションも見られ、興味深かったです。今回はマーク・ナップの分類をもとに課題研究を進めましたが、すべての非言語コミュニケーションを考察したわけではないので引き続き調べていきたいと思います。

(国際教養学部2年 佐野 沙知子)

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2015/03/02

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