国際教養学部生22人がスペインで「海外課題研究」
パブロ・デ・オラビデ大学で語学習得しながら研究進める

 国際教養学部では専攻する第二外国語に基づきフランス、スペイン、ドイツ、ロシア、中国の5カ国に留学して、選択科目「海外課題研究」を行っている。語学の習得と、留学先の文化や社会に関連した研究が目的だ。今年度は64人が2014年8-12月の1セメスター(1学期間)にわたり履修した。

 スペインからは、パブロ・デ・オラビデ大学に留学した22人が、向上した語学力と研究の成果を得て帰国した。

【『ハポン』という名字とコリア・デル・リオ】

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 私の研究のテーマは「ハポン」という名字とコリア・デル・リオです。

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 支倉常長の銅像 

 コリア・デル・リオとは、留学先であったセビージャにある小さな村です。スペイン語で「ハポン」とは、「日本」を意味するのですが、「ハポン」という名字を持つ人々が、コリア・デル・リオには存在します。その人口は、全体人口3万人の2%にあたる、約600人だと言われています。現地の公園には、日本の侍 支倉常長の銅像があります。支倉常長とコリア・デル・リオのつながりはと言いますと、約400年前まで遡ります。1611年日本では仙台藩が三陸地震によって大津波に襲われました。そこで、支倉常長率いる慶長遣欧使節団が、欧州との通商を成功させ、仙台藩を震災被害から復興させることを目的としてセビージャを訪れたのです。

 私は留学前にテレビで、ハポンを名乗る人々がスペインに存在するということを知りました。もちろんその時「ハポン」が「日本」を意味するということを知っていた私は驚きと共に興味を持ったことがきっかけです。

 私たち日本人は、ハポン姓を持つ人々の存在や起源を論文や小説、テレビ番組などの媒体から知ります。それに対して、ハポン姓を持つ人々はどのように自分たちの名字の起源を知るのだろうか。そしてその起源は、私たちの知るものとどこまで一致するのだろうかと疑問に思いました。更に、彼らは「ハポン」を名乗ることをどう感じていて、どこまで自慢できているのかと疑問を持ちました。日本の習慣は存在するのかという点も気になりました。これらの疑問を彼らに直接尋ねることで、答えを導くことをこの研究の目的とします。

 私の研究は、ハポン姓を持つ人々の意見を重要視するため、現地調査とアンケート調査が中心です。留学前の段階では、文献から起源となる歴史をたどり、日本人がコリア・デル・リオに留まった理由を調査しました。留学中では、実際にコリア・デル・リオを訪れ、ハポン姓を持つ人々30人を対象にアンケート調査を行いました。一人のハポンさんに直接アンケートの協力をお願いし、周りのハポン姓を持つ人へ協力を促してもらい、インターネットを使って回答してもらうという形を取りました。

 調査内容は4つです。

①ハポン性の起源をどこまで知っていますか。またその起源をどのように知りましたか。
 この質問では、30人全員が同じ内容の起源を答えてくれました。それは、支倉常長率いる慶長遣欧使節団がセビージャを訪れたこと。最終的に、一行は帰国に至るのですが、日本に帰国せずコリア・デル・リオの地に留まった侍が数人おり、その侍が現地の女性と結婚し子孫を残した、または洗礼時に祖国日本を名乗ったことから始まるといった内容です。これは、私が文献調査で知った起源と同じ内容でした。ではその起源を知った経緯としては、私は代々受け継がれる名字であるから親の話によって起源を知るだろうと予想していましたが、70%以上の人が本や資料からと答え、殆どが同じ本から情報を得ていたことが分かりました。Juan Manuel Suárez Japónの『De Sendai a Coria del Rio』という本です。その他に、親やある一人の人物から聞いたという意見が挙がりました。Virgino Carvajal Japónという人物です。彼は嘗てハポン姓の起源を調べた人物であり、日本とコリア・デル・リオの絆を結びつけた人だと言われています。彼の名前は、私が現地の文化センターを訪れた際に説明を受けた人物でした。

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発表する越山さん 

②「ハポン」を名乗ることを自慢に思いますか。
 この質問に対しては、私は自慢に思わない人が多くいると予想していましたが、名前に歴史があること、今や村の特徴となっていること、先祖が何千もの文化に属していることを誇りに思うといった理由から、30人全員が自慢に思うと答えてくれました。

③名字以外に日本とのつながりはありますか。
 この質問では、77%の人がつながりがあると答えました。私が予想していた日本の習慣や伝統は特にありませんでしたが、日本人がよくコリア・デル・リオを訪れる、日本人の友達がいる、仙台・石巻とのつながり、ハポン姓を持つ赤ちゃんに蒙古斑があるといったつながりがありました。日本人の友達がいるという意見では、前田ようこという人物が多数挙げられました。彼女は、セビージャ在住のコリア・デル・リオで日本の文化を教える活動をしている女性でした。それに対し20%はつながりがないと答えましたが、もっと日本について知りたい、日本語を学びたいという積極的な意見でした。

④ハポン姓を持つ人同士でつながりはありますか。
 この質問では、祭りや集会など決まった行事はないが、80%以上の人が、ハポン姓を持つ人同士で絆があり、お互いが家族であると思っていると答えました。

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越山さん(右) 

 私は最終的に、次のように結論付けました。ハポン姓を持つ人々は、私たち日本人と同じく主に本から起源を知り、その起源は私たち日本人が文献から得る内容と同じである。そしてその起源である歴史と偉大さから、全員が「ハポン」を名乗ることを自慢に思っている。つながりという点では、ハポン姓を持つ人々の家庭には、特別な日本の伝統や習慣はないが、日本人との関わりは多い。そして、研究を通して共通意識を強く感じられたことから、彼らの中には一つの共同体意識があるということです。この研究では、ハポン姓を持つ人々の協力もあり、結論を出すことが出来たと共に、彼らの思いや日本への意識の高さを知ることができ、私たちがもっとスペインに対して意識を高めるべきだと考えました。

(国際教養学部2年 越山 佳純)

2015/02/10

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