国際教養学部の2年生60人がスペインで「海外課題研究」
パブロ・デ・オラビデ大学で語学研修を受けながら研究行う

オペラ『カルメン』から見る18世紀19世紀の女性とヒロイン“カルメン”の比較 ローマ橋

 

 国際教養学部の2年生 76人が2013年8月―2014年1月に、それぞれが専攻する第二外国語に基づいてドイツ(デュッセルドルフ大)、フランス(レンヌ第二大)、スペイン(パブロ・デ・オラビデ大)、ロシア(サンクト・ペテルブルグ大)、中国(上海大、蘇州大)の5カ国に留学した。演習科目「海外課題研究」による留学で、1セメスター(1学期間)、提携先大学で語学研修プログラムを受けながら、それぞれ課題に挙げたテーマの研究を行った。

スペインに留学したのは30人。語学力の向上とともに、研究成果を持ち帰った。

 

■「オペラ『カルメン』から見る18世紀19世紀の女性とヒロイン“カルメン”の比較」

カルメン像

 私の研究テーマは「オペラ『カルメン』から見る18世紀19世紀の女性とヒロイン“カルメン”の比較」です。研究内容は、フランスの作家メリメによって出版された小説『カルメン』を元に作られたオペラ『カルメン』がスペインという国にとってどのような存在であり、影響を与えたのかを様々な側面から追うというものです。中学生のころに出会ったこの『カルメン』という作品こそが私のスペインに対するイメージであり、力強く自由に生きる女性が暮らしているというイメージのスペインに興味を持ったきっかけです。留学先が、舞台となったセビリアだったため、ぜひ作品を研究したいと考えました。

 現代のスペインの姿と異なる点もありますが、まず、実在した場所を舞台に作られた物語がなぜこれほどまで人気を博しているのかと疑問に思いました。スペインのセビリアを舞台にそこに暮らす風変わりな女性を主人公としたこの作品の中では、音楽や演劇の要素のほかに違った視点からの強いメッセージが含まれていることに気付き、それを探ることでスペインという国を知る手掛かりになると考えました。

荻原里菜さん

 私の研究は文献や現地調査が中心です。留学前の段階では『カルメン』という作品を知ることに重点を置いていました。実際に世界各地で上演されたオペラの映像や映画を視聴し、どのようなアプローチで研究を進めていくかを見極めたり、メリメの小説を読んだりして一つの物語の中にどのようなメッセージがあり、現地で何ができるかを考察立てました。セビリアに到着した際からは舞台になった場所、建築物を中心に訪れ、インタビューを行う事の出来る場所では現地の方々に協力をお願いしました。さらにカルメンを執筆する手がかりとなったアンダルシア州の都市、カルメンの姿を描いた美術作品などを見学し、それぞれのカルメンに対するイメージやどのように描いているのかという点にも注目して研究の手がかりとしました。

 音楽的起案店から取り上げている資料がほとんどだったので、物語『カルメン』についての資料を見つけることが難しく、どのように研究を進めて行ったらよいのかと行き詰まったこともありました。しかし、日本語だけでなく留学先の図書館などを中心にスペイン語、英語の書籍や論文を中心に研究を進めていくと方向性を導くことが出来ました。また、アンケートを使用することは難しいテーマでしたので個人の見解に偏らないように気を付けました。

オペラ『カルメン』から見る18世紀19世紀の女性とヒロイン“カルメン”の比較

 研究の中で、カルメンがジプシーとして描かれている事、タバコ工場で働いている事、そして芯のしっかりした自立した女性として描かれている事の3つのキーワードが挙がり、それぞれの観点から当時の女性を追った結果、スペインにおける『カルメン』という物語の重要性が見えてきました。スペインにおいて女性が社会進出を果たすきっかけの一つとなったタバコの生産ですが、この物語で移民という立場の女性をスペインの経済の中心となったタバコ工場で働かせることで作者はスペイン女性の社会進出の象徴としてカルメンを描いたのではないかと結論付けることが出来ました。『カルメン』に登場するヒロインのカルメンは18世紀から19世紀のスペインにおいて存在したのかという疑問点を軸に研究を進めた結果、確証的な一つの答えを定めるのではなく様々な観点からその存在を想像することが出来ました。

カルメンの道

 私はスペイン語のゼミを選択しているので、このテーマを卒業論文のテーマにすることを視野に入れながら、今回の研究結果から挙がった疑問点をさらに探っていきたいと考えています。例えば、スペインにおける女性の社会進出の点では、人種や宗教の面からもアプローチをかけることが出来ると考えていますし、今回はスペインに焦点を当てましたが、ヨーロッパ全体のカルメンに対する評価や見解はどのようなものであるのかというものです。これらを知ることで、スペインという国の考え方や歴史を知ることが出来ると考えています。

(国際教養学部2年 荻原 里菜)

2014/02/14

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