体育学研究科博士課程3年の木村華織さん
「日本スポーツとジェンダー学会第10回記念大会」基調報告に登壇して

 今大会では、「日本スポーツとジェンダー学会—10年の総括と課題」と題し、3つのテーマでの基調報告が行われました。その一つは、若手研究者の視点から、スポーツとジェンダー研究の可能性について展望することでした。幸いにも、私はこのテーマの報告者として登壇する機会を得ることができました。

 報告では、スポーツとは、身体や性別による違いを際立たせる場ではなく、身体活動を通じてそれぞれの違いを理解し合う場であること、そして、スポーツとジェンダー研究とは、人を分けるためにもうけられた境界を、身体活動を通じて越境する方法を見いだす研究であり、そうした研究の積み重ねによって、スポーツが決して勝者の論理のみに満たされるものではなく、むしろ個人を尊重する場としてこそ機能するのだということを発表させていただきました。

 大学院での研究活動を通し、これまでとは異なる視点からスポーツをみることを学びました。そのひとつがジェンダーという概念でした。ジェンダーというフィルターを通すことよってスポーツにおける様々な問題がみえてきます。

木村華織さん
例えば、性の峻別、アスリートの人生における選択、学校教育上の問題、スポーツ・フォア・オールという理念に基づいたスポーツにおけるすべての人の平等などです。これらは女性に限った問題ではなく、個人の人生にかかわることであり、人権の問題でもあります。スポーツにおけるジェンダーの問題を人権問題として捉え、個の違いを理解し尊重する姿勢を身につけることが、多様なスポーツのあり方を見出し、スポーツが個を尊重する場として機能していくことに繋がるのではないでしょうか。今後も大学院での研究活動を通し、スポーツにおける平等、スポーツのもつ可能性を問い続けていきたいと思います。

(体育学研究科博士課程3年 木村 華織)

2011/10/06

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