北川前学長が退職記念の最終講義 積雪の中、教え子たちも詰めかける

 前中京大学学長でスポーツ科学部・大学院体育学研究科、北川薫教授の退職記念最終講義が1月20日、豊田キャンパス4号館431教室で開かれた。この日は未明から濃尾平野、三河地方にかけての平地でも大雪に見舞われ、積雪のあいにくの気象条件だったが、教室には在校生のほか、教職員、教え子をはじめとする卒業生らが他大学からも合わせて150人近くが駆けつけ、北川教授の重厚で、また時には軽妙な語り口で聴衆を引き寄せる講義に聴き入った。

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                         最終講義をする北川前学長

 テーマは、「体育・スポーツ学を振り返り、未来を考える」。戦後の歩みを振り返り、未来へ向けての提言で締めくくられた。
 中学、高校の教科書にある「保健体育」はなぜ、体育やスポーツではいけないのか、保健と健康の違いなどについて興味深い話が続き、教養体育教員の資質とあり方、さらに教養体育のとるべき道へと講義は進んだ。教養体育は、健康と結びつくことによって存続を図ってきたが、体育・スポーツの重要性を考えれば、健康と決別し、独自の道を歩むのが体育・スポーツの理念に合致すると結論付けた。
 何気なく用いている「保健」という言葉は、保健所、保健婦のように機能と結びつけられて使用されるが、医学大辞典には単独での項目はないといい、一方、「健康」は単独で挙げられている。かつて文部省は保健教育という言葉を使っていたが、現在では保健教育ではなく、健康教育となっている。ただ、保健体育は使われており、「保健の領域で体育が位置付けられているのは不満」と述べた。

 しかし、健康の概念は極めて広く、平和と同様に具体的目標があるわけではない。平和には100%賛成するが、平和のあり方になると全く違ってくる。健康もそうであって、体育・スポーツ学において健康を前面に出すのは問題がある。「体育・スポーツ学の自立を」が結論だとし、今後の課題として、実技がしっかりできること、自分たちの立ち位置をしっかりと説得できることが大切だと力説した。
 そして、「健康が目的ではなく、スポーツが目的であり、(健康は)その手段」と述べ、「健康に代わる概念が大切。言葉作りから例えば、healthを(健康ではなく)元気と改訳するのもいい」と話し、大きな拍手を浴びた。


 北川前学長は、2015年3月末に学長を退任し、同年4月から梅村学園学事顧問に就任している。中京大学を中心とした学園のスポーツ施策を検討する「梅村学園・中京大学スポーツ将来構想会議」(略称・スポーツ会議)の議長も務めている。 

2016/01/20

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