開学60周年記念、トヨタの張会長講演に500人
「大学も総合型の研究を」とメッセージ

張富士夫・取締役会長

 中京大学が来年、開学60周年を迎えるのを前に、トヨタ自動車の張富士夫・取締役会長を講師に迎えての記念講演会が5月21日、名古屋キャンパスにこの春オープンした図書館・学術棟の「清明ホール」で開かれた。同ホールのこけら落としでもあり、学生や教職員をはじめ、東海地方の経済人、市民ら約500人がメモを取りながら熱心に聴講した。講演のテーマは「大学の未来へのメッセージ」。張会長は社会人としての駆け出し時代の思い出や苦心談を交えながら、学生にも分かりやすい言葉で熱弁をふるった。

 1960年に入社した張会長は、希望配属先を問われ、「いろんな経験がしたいと思い、どこでもいい」と答え、社内で話題になったエピソードを紹介。その結果、まったく経験のない社内報を作る部署に配属され、年配の新聞記者に記事の書き方を教わったことや、用地買収の担当となって、なかなか交渉に応じない地主に一升瓶を持参して本音を引き出しながら説得した経験などを、ユーモアを交えて語った。

 その後に配属され、15年間在籍した生産管理部門でも、厳しい上司の下、ムリ、ムダ、ムラを省くトヨタ生産方式や経営改善の根本を学び、アメリカ・ケンタッキー州の工場に赴任して問題に行き詰まった時に役立てた経験を事例に挙げながら、「学校では教えられなかったことも、実社会の体験を通して分かってくることが多かった」と述懐。中京大学の「建学の精神」の四大綱である①ルールを守る②ベストを尽くす③チームワークをつくる④相手に敬意を持つ  は「社会で必ず生かされるだろう」とコメントとした。

会場風景

 さらに、大学の在り方について、「大学の研究は、細分化、専門化されているが、実際の社会では全体を総合的に見なければわからないことが多い。総合型の研究にも取り組んで欲しい」と呼びかけた。そして、「グローバル社会が進む中で、欧米はどういうやり方をやってくるかなどを研究し、文化や習慣、考え方の違いやお互いの長所を吸収して、事業に結びつけてほしい」と述べた。

 また、学生時代、剣道に明け暮れていたという張会長は、同じ時期に「突然出てきた(開学したばかりの)中京大学に大学選手権の優勝を持って行かれて驚いた思い出がある」と振り返り、その原動力となった中京大学の「建学の精神」を讃えていた。

2013/05/22

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