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アートギャラリーC・スクエア

第113回企画 蔵真墨展 ─氷見─

会期 7月8日(月) ~ 27日(土)
休館日 7月21日(日)
開館時間 午前9時 ~ 午後5時 入場無料

ご案内

 蔵真墨さんは専ら人物をモティーフとしたストリートスナップを撮ってきた写真家ですが、本展は自身が生まれ育った富山県氷見市の人、家族、風景などを撮った展観です。作家はこの撮影を通じて、自らの拠って立つところを確認しようとしているかのようです。

アーティスト・トーク
日   時 7月20日(土) 14:30~16:00
会   場 C・スクエア会場内
対談:蔵真墨・笠原美智子(東京都写真美術館事業企画課長)
※聴講無料 申込不要
※終了後、レセプションを開きます。

作品紹介

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解説

笠原美智子(東京都写真美術館事業企画課長) 

 家族とは厄介なものだ。自分では如何ともしがたいその存在が、人格形成はもとより、趣味・嗜好まで、大きな影響を及ぼす。否が応でも、一生ついて回る。外から見たらこれ以上なく幸福そうに見える家族であっても、その実はわからない。不幸極まる家族に思えても、その実はわからない。

 わたしたちは家族の写真を撮る。生まれたとき、寝返りしたとき、お宮参り、小学校入学、家族旅行、卒業式、入社式、恋人の写真、結婚式……。もはやそんな歩みが「人並み」とは思っていないわたしでも、姪の写真は撮る。理屈抜きで愛しいものを、人は写真に収める。

 写真家も家族を撮る。けれども彼らの写真は公開を前提にしているので、ただ愛おしいからといって、シャッターを切るわけではない。ただ愛おしくて撮った写真もあるだろうけれど、写真家の眼は、愛しいものを愛しいものとしてそっとしておくほど、優しくはない。写真家の撮った家族の写真はいろいろあるけれど、総じて、「家族という厄介なもの」をテーマにしているように思える。

 蔵真墨は〈氷見〉で家族を撮っている。彼女の生まれ育った家、そこで暮らす両親や兄、そして叔母、叔父、姪、猫、食卓に上がる食べ物、その家がある〈氷見〉の町の風景である。家族は蔵真墨を写真家だと認識してはいるけれど、彼女は「家族」だから警戒していない。蔵真墨の視線も、「絵になる写真」を撮ろうというあざとさはなく、かといって、優しいわけでもなく、淡々と家族を撮ろうとしている。

 蔵真墨は長年ストリートで、出会った一瞬の光景に、被写体の何気ない仕草や表情や、それが作り出す空気のなかに、今を生きる強さと困難さと危うさを写し出してきた。その同じ視線を家族に向けようとしている。18歳で進学のために後にした「田舎」を、自分を培った人や環境や社会を、ひとつひとつ確かめるように撮っている。

 人も物も風景も、そこには何も際立ったものはない。田圃と山と海に囲まれた、道路沿いの大型店舗だけが目立つ、何の変哲もない田舎町と、その地に長く暮らす家族の肖像である。現在の日本の田舎なら、どこにでもありそうな風景、凡庸で平和で退屈で、だからこそ貴重な日常である。

 けれど、同じような田舎で育ち、同じように18歳で都会に出て、同じような家族を持っている私には、この写真がとても「厄介なもの」に見える。蔵真墨の写真には、現代日本の家族が直面している、「凡庸で平和で退屈で、だからこそ貴重」なものから何かの拍子にヌッと出てきそうな何かの気配が潜んでいるように思える。それはたぶん、「厄介なもの」である。

プロフィール

Masumi Kura
蔵 真墨(Masumi Kura)
1975 富山県生まれ
1998 同志社大学文学部英文学科卒業
2001 東京ビジュアルアーツ写真学科中退
  東京都在住
【個展】
2013 「イ・ケ・メ・ン」ツァイト・フォト・サロン、東京
2012 「kura」ビジュアルアーツギャラリー、大阪
2011 「蔵のお伊勢参り、其の七!京都・大阪」ツァイト・フォト・サロン、東京
2010 「蔵のお伊勢参り、其の六 近江の国」ギャラリー街道リぼん、東京
「蔵のお伊勢参り、其の五 二川から伊勢!」ツァイト・フォト・サロン、東京
2006 「蔵の放浪記、第一部 新宿」ゴールデン街こどじ、東京
2005 「蔵のお伊勢参り、其の四 金谷から白須賀」PLACE M、東京
2004 「蔵のお伊勢参り、其の二 神奈川から箱根」photographers’ gallery、東京
「蔵のお伊勢参り、其の一 日本橋から川崎」photographers’ gallery、東京
2003 「love machine vol.4」photographers’ gallery、東京
2002 「love machine vol.3」photographers’ gallery、東京
「love machine vol.2」photographers’ gallery、東京
「love machine」photographers’ gallery、東京
2001 写真人間の街プロジェクト「東京―大阪」ガーディアン・ガーデン、東京
【グループ展】
2012 「この世界とわたしのどこか 日本の新進作家 vol.11」東京都写真美術館、東京
「パラレル・ヴィジョンズ:日本と韓国の現代写真」香港藝術中心、香港
「PORTRAITS」日本橋高島屋美術画廊X、東京
2011 「第10回フォトシティさがみはら プロの部入賞作品展」新宿ニコンサロン、東京
「発科展 - 早稲田大学芸術学校空間映像科 閉科展」竜宮美術旅館、神奈川
2010 「フォトシティさがみはら2010受賞作写真展」相模原市民ギャラリー、神奈川
「あれから20年、これから20年」ガーディアン・ガーデン、東京
2008 「写★新世界 ―パリ、ニューヨーク、東京、そして上海―」せんだいメディアテーク、宮城
2007 「Japan Caught by Camera-Works from the Photographic Art in Japan」上海美術館、中国
2005 「現在のポートレイト」パルテノン多摩、東京
2004 上映会「この夜の恍惚と不安」space harappa、青森
「横濱写真館」にて「蔵のお伊勢参り、其の三 三島から島田」BankART1929、神奈川
2003 「photographers’ gallery展」中京大学アートギャラリーC・スクエア、愛知「人臭(ヒトシュウ)―猫臭(ネコシュウ)に抗うその強烈な」空間実験室、青森
2002 「フォトネシア・光の記憶 時の果実 photographers’ gallery展」前島アートセンター、沖縄
2001 「Opening Exhibition」 photographers’ gallery、東京
【受賞】
2010 さがみはら写真新人奨励賞
【出版】
2011 『蔵のお伊勢参り』蒼穹舎
2010 『kura』蒼穹舎
【パブリック・コレクション】
沖縄県立博物館・美術館/上海美術館/相模原市(神奈川県)/
東京都写真美術館

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