スポーツ科学部生がアメリカで海外スポーツトレーナー研修
人間力や指導方法を目指す教員像のヒントに

 体育科教員を目指している私は、2月25日-3月6日にアメリカで実施された「海外スポーツトレーナー研修」に参加しました。一番の理由は、「自分にしかなれない教員像」を見つけるためです。どのような教員になって、子ども達に何を伝えたいのか。私はそうした教員像を持つことの重要性を強く感じていましたが、そのための行動はほとんど起こせていませんでした。研修への参加は「トレーナーの知識はどの競技でも共通するため、自分の専門外の競技や部活動を受け持つ時にも子ども達の力になれるのではないか」「コーチングの技術も同じ指導者の立場から活かせることが多いのではないか」と考えたからです。研修では、目指したい教員像のヒントとなる3つの素晴らしい出会いがありました。

 1つ目はWorld Athletics Centerのアスレチックトレーナー(AT)である谷澤さんのお話です。谷澤さんは目の前で実演をしながら説明してくださることも多く、わかりやすいお話のおかげで漠然としていたATのイメージを少し掴むことが出来ました。谷澤さんからは、子ども達へのサポートの際には「セルフケア」の指導が大切であることを教えて頂きました。ボールを用いながら自分で行うマッサージやストレッチの知識を身に付けることで、大きなケガをする前に未然に防ぐことが出来るとのことでした。また、子ども達だけでなく親にもセルフケアの知識を持ってもらうことが大切だと話されていました。さらに、休む時には休み、選手に負担のかからない短時間で濃い内容の練習を組み立てることを教育の中で行っていくことが重要だという考えから、日本で行われているような2部練習がアメリカには無いことも教えて頂きました。これらのお話を伺って、私が将来教員になった時には、頑張るとき休むときのメリハリをつけさせ、生徒が自己管理できるようになるための指導を行いたいと思いました。

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 2つ目はトレーニングジムFischer Instituteの理学療法士(PT)である菅野さんのお話です。プログラムの1つに、私達学生が自己紹介をしながら菅野さんとお話をする時間がありました。菅野さんはひとりひとりの自己紹介をとても真剣に聞いて下さり、その内容を受けて「その考え方素敵だと思う」「その言葉ビビっと来た」と必ずプラスの言葉をかけてくださいました。そのように私達の考えを認めて褒めてくださった上で、菅野さんは学生の話に関連するようなたくさんの経験や考えを素敵な言葉・フレーズと共に語ってくださいました。例えば「embrace(相手の心を抱きしめるように受け止める)」「自分の本気は伝わる」など、どの言葉も印象的なものばかりでした。菅野さんは、PTの仕事ではケガの本質をつきとめることが重要であり、そのためにはクライアントと密なコミュニケーションを取ることや観察力が不可欠だとおっしゃっていました。そのような力は、PT という職業に留まるものではなく、人と接する際に必要不可欠な人間力であると感じました。私も菅野さんのように生徒達を受け止め、たくさんの言葉のプレゼントを差し出せるような教員になれればと思いました。

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 3つ目は、トレーニングジムEXOSのコンディショニングコーチである阿部さんの講義や現地スタッフの方によるトレーニングの実技です。これは実際にトップレベルの選手も行っているトレーニングを体験するというものでした。体を正しく使うことでケガのリスクを低下できること、体幹(コア・ピラー)の安定性が動きの要となること、体の特定部位を鍛えるのではなく競技の動きにつながる筋力トレーニングを実施すること、などを学びました。これらの知識はあらゆる競技のベースとなるものです。様々な種目を受け持つ体育科教員にとって、このような基盤の知識はとても重要なものだと思います。それをこうして世界トップレベルの施設で学ぶことが出来たのは、この研修に参加したからこそであり、本当に嬉しく感じました。また、私は現在、高校の部活動で外部指導者をしているのですが、EXOSでの研修前よりも体の使い方などについて、的確に説得力を持ってアドバイスが出来る様になりました。大学生のうちにそうした実践力につながる知識を多く学んでいきたいと思います。

 はじめは、健康科学科やレーナーをしている学生に比べて知識のない私が研修や話の内容についていけるかどうか不安でした。しかし現地でのお話はどれも分かりやすく、そしてなによりアメリカで今まで経験したことのない多くのことを肌で感じる喜びと楽しさはとても大きく、すぐに不安は吹き飛びました。様々な施設を訪れたり、英語でのコミュニケーションにチャレンジしたり、食事やショッピングなどアメリカの文化を体験したりと、この研修は自分の視野や感性が広がっていく刺激で溢れていました。今回の研修によって得ることの出来たたくさんの可能性は、教員を目指す私の人間としての幅を確実に広げてくれたと思います。この経験を胸に、これからも私がアメリカで出会った方々に感じたように、少しでも生徒に先生と出会えて良かったと思ってもらえるような「自分にしかなれない教員像」を探していこうと思います。

(スポーツ科学部 スポーツ教育学科2年 浅井 千明)

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2015/05/11

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