国際教養学部の2年生14人がフランスで「海外課題研究」
レンヌ第二大学で語学研修プログラムを受けながら研究行う

フランスの原発事情と福島原発事故について レンヌ第二大学にて

 

 国際教養学部の2年生 76人が2013年8月―2014年1月に、それぞれが専攻する第二外国語に基づいてドイツ(デュッセルドルフ大)、フランス(レンヌ第二大)、スペイン(パブロ・デ・オラビデ大)、ロシア(サンクト・ペテルブルグ大)、中国(上海大、蘇州大)の5カ国に留学した。演習科目「海外課題研究」による留学で、1セメスター(1学期間)、提携先大学で語学研修プログラムを受けながら、それぞれ課題に挙げたテーマの研究を行った。

 フランスに留学したのは14人。語学力の向上とともに、研究成果を持ち帰った。

 

■「フランスの原発事情と福島原発事故について」
 2011年に起きた史上最悪の福島原発事故を機に、世界中が原子力発電の是非についての議論が高まりました。原子力発電の依存率が世界一であるフランスでは、福島原発事故をきっかけとして、オランド大統領が2012年の大統領選挙の時に原発への依存度を下げることを公約として当選しています。そこで私は、フランスの人びとが「福島原発事故をきっかけに、原子力発電に対する考えは変わったのか?」そして「オランド大統領の原発政策をどう思っているのか?」といった疑問が浮かび、「フランスの原発事情と福島原発事故について」をテーマに調査することを決めました。

梶みちるさん

 私は、疑問をアンケートにして、100人から回答を得ました。アンケート方法は無記名質問紙法で、対象は10歳以上のフランス人、調査期間は11月と12月の2か月です。調査場所は法学部や経済学部が設置されているレンヌ第一大学、そしてCIREFEの語学学校、さらに各ファミリーに協力してもらいました。

 研究には、他国の知らない地で知らない人に話しかける勇気と、純粋にアンケートの内容を説明するフランス語力が必要でした。また、自分のフランス語が通じなかったりアンケートを断られたりしたときは、かなり自信を無くしました。しかし、私のホストファミリーが毎日私を励まし、正しいフランス語の発音を教えてくれたおかげで、私は100枚ものアンケートを集めることに成功しました。

 オランドの政策にフランスの人々は賛成45%・やや賛成19%と、64%がオランド大統領の政策に賛成していることがわかりました。しかし、『もし原子力発電が削減されれば電気料金が上昇するが、それでもあなたは賛成か』という質問に対しては、上記の質問への答えとはうってかわって26%しか賛成と答えた人はいませんでした。

また、『原子力発電は危険であるか』という質問に48%のフランス人が「非常にそう思う」と回答しました。さらに、『2011年に日本で起きた震災を知っているか』という質問に「よく知っている」と回答したフランス人が78%でした。『原子力発電について大統領に要求したいことがあるか』という質問には、「ドイツを見習い原子力発電への過剰な依存はやめるべき」「より危険でない発電方法を考えていくべき」などの原子力発電を削減するべきだという意見が大半でした。

フランスの原発事情と福島原発事故について

 アンケート結果から、フランス人がさほどオランド大統領の政策に反対していないことが分かりました。むしろ、原子力発電の削減に積極的なようにも見受けられました。しかし、なぜフランス人はここまでこれほど原子力発電を推進してきたのでしょうか?

 その理由はおそらく3つあると、私は考えました。一つ目は、天然ガスや石炭のあるイギリスやドイツとは異なり、フランスには原子力しかなかったということ。二つ目は、地方分権的なドイツとは異なり、フランスは中央集権の国であり、強大な権限をもつ大統領たちが、これまで一貫して原子力発電を推進してきたということ。三つ目は、核開発と原子力発電技術は不可分の関係にある。つまり、核兵器を保有するフランスには、原子力発電を推進しない理由がなかった、という理由が挙げられます。

フランスの原発事情と福島原発事故について

 しかしながら、フランスにはエネルギー政策において日本が見習うべき点が多くあります。例えば、フランスは原子力発電に加えて水力発電も充実しており、二酸化炭素を排出しない電力発電が90%に上っています。さらにフランスは農業国で、バイオマスの利用も多く、その研究開発も進んでいます。それに対して、日本で一番多く使われているエネルギー源は石油で、次に天然ガスや石炭が挙げられます。石油や天然ガスを海外から調達するためには、巨額のお金が必要です。そしてそのコストは電気料金として消費者にはねかえってきます。それだけでなく、こうして他国に全面的にエネルギー源を依存していることは、安全保障上のリスクになっています。さらに、原子力発電の代わりとしての火力発電は、温暖化対策に逆行していることも否定できません。

 これから日本はどうしていくべきなのでしょうか。福島原発事故によって原子力発電への信頼が失われましたが、日本はフランスを参考にできる部分もあるのではないでしょうか。また、いつどこで大地震が起こるのか分からない中で、私たちは原発を再稼働するのでしょうか。それとも、脱原発へと大きく方針を転換するのでしょうか。どちらに進むべきか、私たちは真剣に考えるべきなのです。

(国際教養学部2年 梶 みちる)

2014/02/19

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