情報科学研究科院生の加納徹哉さん、木村翔太さん、澤田匡秀さん
日本医用画像工学会大会で研究発表

  情報科学研究科情報科学専攻修士課程の加納徹哉さん、木村翔太さん、澤田匡秀さんが、254人の臨床医や工学系研究者が参加した日本医用画像工学会(JAMIT)の第28回大会(8月4・5日、中京大学)で研究発表を行った。3人の学生は、CT画像を用いて、より早期に、正確に、高度な臓器診断ができる方法や、医師の診療作業の負担を軽減する手法を研究しており、今大会、下記のテーマで研究成果を披露した。


●「腹部CT像からの肝臓血管自動抽出結果を用いた肝区域自動分割の試み」
  加納 徹哉さん(修士2)

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  本学会は、医用画像工学の専門家が集まる中心的な学会であり、これまで自分が気付かなかった問題点や、見落としていた点に関する理解を深めるきっかけになった。
  肝臓のCT診断が日常的に行われるようになった現在、診断の質的な向上の裏側で、読影医の労力増大が大きな問題となっている。この問題を解決するため、肝臓CAD(computer-aided diagnosis)の実現は、有効な解決策の一つとして期待されている。本研究は、肝臓の診断や手術計画の策定に重要な肝区域を自動的に推定する方法を提案した。肝臓血管の走行を基準に肝区域を推定し、推定結果を用いてがん病変部の存在区域を判定した。提案方法を6症例に適用した結果、医師の判定結果をほぼ一致することが確かめられた。今後は、推定結果に存在確立の重みをつけた肝区域尤度画像の導入を検討している。


●「パラメトリック固有空間法による同一被験者CT画像の高速な位置合わせ」
  澤田 匡秀さん(修士1)

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  本研究では医師の診療における作業負担軽減のためにパラメトリック固有空間法を用い、同一被験者のそれぞれ撮影時期の異なるCT画像同士を1秒以下という超高速に位置合わせをする技術に関する発表をおこなった。
  今回が初めての口頭発表。多くの専門家を前にして、10分という短い時間ではあったが、有意義な発表と議論を行うことができた。発表そのものは、指導教授や研究室の仲間の協力と、自身の練習の効果もあり、スムーズにできた。しかし、質疑応答の場においては、後からより良い回答が浮かぶなど、限られた時間で最適な答えを出すことの難しさを知った。
  今後は、この研究テーマをより一層深化させるとともに、次回の学会発表に備えて、その場で納得のいく応答ができるように日頃から議論も大切にし、研究していきたい。


●「門脈系血管との位置関係を利用した腹部造影X線CT像からの膵臓領域抽出」
  木村 翔太さん(修士1)

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  がんの中でも膵がんは初期段階において初発症状が無い、病変の体積が小さい等から発見しづらいため、画像診断においても見落としやすい。そこで本研究では,膵がん検出の前段階として、膵臓領域の抽出に的を当てた。膵臓は腹の深部に位置し、場所の特定が難しいため、膵臓に沿うように存在する門脈系血管を用いて膵臓領域の抽出を試みた。
  今回の大会では多くのことを学んだ。普段、他大学の方との交流はあまりないが、ポスター発表ということもあり、関連研究をしている方等とのディスカッションができ、とても有意義であった。
  今後の目標は膵臓の抽出精度の向上である。現段階では膵臓の造影が十分でなく、脂肪の浸潤が発生している時には精度が低下しやすい。このような症例に対応した処理を検討していきたい。

2009/09/03

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